「グッドナイト、マレーシア370」機長最後の言葉…… MH370便消失11年、専門家が示す「3つの仮説」

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 消息を絶つ直前、機長が管制官に告げた言葉は、あまりにも平静だった。2014年、クアラルンプールから北京へ向かっていたマレーシア航空370便——ボーイング777型機、乗客乗員239人を乗せた大型旅客機が、レーダーから完全に姿を消した。航空監視網が発達した時代に、なぜこれほどの巨体が忽然と消えたのか。11年経った今も、専門家は残されたデータから真相を探り続けている。

「グッドナイト、マレーシア370」——最後の交信とベトナム上空での暗転

 離陸から約2時間後、マレーシア領空を抜けベトナム領空に入ろうとしていた機長ザハリー・アハマド・シャー氏は、管制官に向けて「グッドナイト、マレーシア370」と無線で告げた。

 これがコックピットから発せられた最後の言葉となった。直後、機体はベトナム領空進入とほぼ同時にトランスポンダー信号を絶ち、管制システムから姿を消した。機内システムが内部から切断されたのではという臆測が広がり、複数国の関与を疑う声も飛び交った。

 マレーシア政府は「発見できなければ報酬なし」の契約で活動する英探索会社オーシャン・インフィニティと組み、南インド洋を中心とした新たな捜索を承認している。豪当局による3年に及ぶ捜索も120平方キロメートル以上をカバーしたが、発見には至っていない。

画像:Ohconfucius / CC BY-SA 2.0 / Wikimedia Commons

ADS-B、レーダー、Inmarsat衛星——データが語る「7時間の飛行」

 システムのダウンにもかかわらず、飛行経路を再現する手がかりは相当量残されていた。自動従属監視放送(ADS-B)、レーダー記録、航空機通信アドレシング・レポーティングシステム(ACARS)、そして英インマルサット社の衛星データである。

 これらの記録は、機体が消息を絶った後も7時間以上にわたり南インド洋上空を飛行し続けたことを一貫して示している。最終的には海に墜落し、追跡は事実上不可能になったとみられる。

 リバプール大学のサイモン・マスケル教授(自律システム)のチームは、アマチュア無線家が観測する微弱信号データ「WSPR」を用いて独自解析を実施。長年の記録を精査し、荒唐無稽な陰謀論を排除して現実的な可能性へ絞り込む作業を進めてきた。

浮上する「3つのシナリオ」——事故か、それとも人為的な何かか

 マスケル氏によれば、当時のデータと矛盾しない説明はおおむね3つに絞られるという。ひとつは、機内で突発的な事故が発生し、乗員が通信も着陸もできない状態に陥ったとする説だ。

 残る2つは何者かが意図的に機体を操作した可能性を指摘するもので、降下時にその人物が生存していたとする説と、既に死亡していたとする説に分かれる。

 人為説が注目される背景には、当局がシャー機長の自宅からフライトシミュレーターを押収し、MH370便の最終航路と酷似したルートのデータが残されていた事実がある。ただし、機長や副操縦士が計画的に機体を乗っ取り墜落させようとした確たる証拠は存在しない。他に説得力ある説明が乏しいことも、この説が注目を集めてきた一因といえる。

 マスケル氏は、機体が未発見のまま残り、これまでの捜索範囲が「降下時の人為的介入なし」との前提に基づいていたことを踏まえ、人為的介入があった可能性がわずかに高まったとの見方を示す。それでも3つの説はいずれも同程度にあり得るとの立場は崩していない。

 新たな捜索が成果をもたらすかは、まだ誰にもわからない。11年を経てなお機体も答えも見つかっていないという事実が、事件の底知れなさを物語る。

 マスケル氏の計算では事故より人為的な最期に至った確率がわずかに高いというが、いずれであれ「極めてまれな出来事」が重なった結果であることに変わりはない。最後の「グッドナイト」という一言と、その後に起きた出来事との落差だけが、今も遺族の胸に重くのしかかっている。

参考:Daily Star、ほか

TOCANA編集部

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