夕暮れの滑走路から無灯火で飛び立ち、そのまま消えた! ボーイング727失踪事件、23年経っても見つからない巨大旅客機の謎

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 財布や鍵を失くした経験は誰にでもあるだろう。だが、全長およそ46メートル、自重40トンを超える大型旅客機をまるごと失くしたとなると、にわかには信じがたい。しかしこれは作り話ではない。2003年5月25日、アフリカ南西部アンゴラの空港から1機のボーイング727が無断で飛び立ち、そのまま地球上から忽然と姿を消したのだ。23年が経った今も、機体の破片ひとつ、乗っていた2人の手がかりひとつ見つかっていない。

夕暮れの空港から、無灯火で飛び立った巨人

 問題の機体は「N844AA」という登録番号を持つボーイング727-223。1975年製で、長らくアメリカン航空の旅客機として空を飛んだベテラン機だ。役目を終えた後は燃料運搬機への改造などを経て、最後はアメリカのリース会社の所有となっていた。

 舞台は、アンゴラの首都ルアンダにあるクアトロ・デ・フェベレイロ国際空港。2003年当時、この機体は駐機場に長く留め置かれ、未払いの空港使用料が膨らんでいたという。日没間近の夕暮れ時、その727は突如エンジンに火を入れた。管制塔との交信は一切なし。許可を得ないまま滑走路へ進入し、ライトもつけずに大西洋へ向けて南西へ飛び立っていった。レーダーから外れ、無線にも応答しない40トンの鉄の塊。アメリカ史上最大級の「行方不明機」が誕生した瞬間だった。

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N844AA、1981年10月撮影 Tim, CC 表示-継承 2.0, リンクによる

乗っていたのはたった2人——資格なきパイロット

 通常、ボーイング727の運航には機長・副操縦士・航空機関士の3人が必要とされる。ところが、この日コックピットにいたとみられるのは、わずか2人だけだった。

 1人はアメリカ人のベン・パディーヤ氏。航空機関士であり整備士でもあったが、727を単独で操縦できる正式なパイロット資格は持っていなかったとされる。もう1人は、コンゴ共和国出身の整備士ジョン・ミケル・ムタントゥ氏。彼に至っては操縦経験そのものがなかったといわれている。巨大なジェット機を空へ上げるには、あまりにも心もとない顔ぶれだ。しかも機体にはおよそ5万3000リットル、航続距離にして約2400キロ分の燃料が積まれていたと伝えられ、この大量の燃料が後に「ただの事故ではないのでは」という臆測を呼ぶことになる。

FBIまで動いた大捜索、それでも手がかりはゼロ

 旅客機がまるごと消えたとなれば、世界が動く。アメリカではFBIが捜査に乗り出し、情報機関も関心を寄せたと報じられている。9.11同時多発テロからまだ2年も経っていない時期だっただけに、「奪われた大型機がテロに転用されるのでは」という懸念が国際社会を駆け巡ったという。

 ところが、これだけ大騒ぎになりながら、捜索は完全に空振りに終わる。墜落を示す残骸は海にも陸にも見つからず、どこかに着陸した記録もない。2人の足取りも、離陸の瞬間でぷっつりと途切れたままだ。後年、航空専門誌が大規模な追跡取材を行ったが、それでも機体の運命を突き止めることはできなかった。40トンの巨体が、まるで蒸発するように消えてしまったのである。

大西洋に沈んだのか、それともどこかで生きているのか

 では、N844AAはどこへ行ったのか。最も穏当なのは、操縦に不慣れな2人が機体を制御しきれず、夜の大西洋に墜落したという見方だ。無灯火で海上へ向かった事実とは相性がいいが、それならなぜ残骸が一片も浮かんでこないのか、という疑問が残る。

 一方で、より物騒な説もくすぶり続けている。駐機料を踏み倒すための持ち逃げ説、保険金や機体を狙った略取説、さらにはテロ組織が絡んだという憶測まで、まことしやかに語られてきた。大量の燃料とあえて無灯火で飛んだ不審な挙動が、こうした「意図的な消失」説に薪をくべている。だが、どの説にも決定打はない。

 スマホひとつ失くしても半日は気落ちするというのに、人類は全長46メートルのジェット機を23年も見つけられずにいる。真相は今も大西洋のどこかか、あるいはアフリカの片隅で固く口を閉ざしたままだ。衛星が地球を見張る時代でも、本当に消えたいものは案外あっさり消えてしまうのかもしれない。

参考:Popular Mechanics、ほか

TOCANA編集部

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