【税率1%】不老不死を夢見る億万長者たちの私設都市「プロスペラ」、米国未承認の遺伝子治療とバイオハッカーが集う奇妙な実態

By ReasonTV – YouTube: https://www.youtube.com/watch?v=TwiE1dxGYNY – View/save archived versions on archive.org, CC BY 3.0, Link

 カリブ海に浮かぶダイビングの名所の島に、武装した警備員が守るゲートがある。その先では、ある意味で国の法律が通用しない。

 シリコンバレーの億万長者たちが巨額を投じ、法人税率はわずか1%、米国では認められていない遺伝子治療まで行われる私設都市「プロスペラ」だ。英デイリー・メール紙の記者がホンジュラス・ロアタン島にあるこの「国の中の国」を現地取材し、その奇妙な実態を伝えている。

ゲートの先はホンジュラスではない? 入域時に交わす「共存の合意」

 記者によれば、空港から車で北東へ25分ほど走るとプロスペラの入口にたどり着く。訪問者はホンジュラスの法律ではなくプロスペラ独自の法規に従うことに同意する書類に署名しなければならない。ゲートを越えた途端、道路の舗装まで良くなるという。

 出資者にはペイパルやパランティアの創業者ピーター・ティール氏、OpenAIのサム・アルトマン氏、投資家マーク・アンドリーセン氏らが名を連ね、投じられた資金は少なくとも2億ドル(約300億円)。敷地は現時点で約4平方キロメートル強にすぎない。

 税制は法人の実効税率1%、個人所得税5%、付加価値税2.5%で、キャピタルゲイン税はない。企業は30か国以上の規制から好きなものを選べ、自作もできる。通貨はビットコインで、民事の裁判は米アリゾナ州の退職判事らがオンラインで担う。

 ホンジュラス政府は2017年の合意に基づきその存在を公認しており、税収の12%が同国に納められ、雇用の9割はホンジュラス人に割り当てる決まりだ。ただし独自の旗や刑法は持てない。

ホンジュラス国内での所在地 画像は「Wikipedia」より

「死を選択制に」 未承認の遺伝子治療と体を改造する住人たち

 最大の売りは、長寿研究を中心とするバイオテック産業だ。2024年には「死を選択制に」を意味する名の会議が開かれ、不老不死に関心を寄せる人々が集まった。

 敷地の一角にあるクリニックは、フォリスタチンと呼ばれる遺伝子治療を手がけている。DNA分子を注入して体の自己修復を促すというもので、マウス実験では寿命が3分の1近く延びたと伝えられる。ただし米国では違法とされ、人間での効果が確立されたわけではない。利用者として、実業家ブライアン・ジョンソン氏らの名も報じられている。

 高層タワーには、生きた藻類から作った飲料で寿命を20年延ばせる可能性があると主張するバイオハッカー、アリス・チェン氏も拠点を構える。母国カナダの規制当局は、人間での安全性確認を認めなかったという。

 体内に7つのチップを埋め込んだリッチ・リー氏は、右手の甲に決済用チップを、指先には磁石を入れている。目に見えない電磁場に触れられるのだと本人は語る。ちなみにプロスペラには病院もスーパーもなく、水1本買うにもビットコイン払いだ。

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人類の未来か、富裕層の「城壁都市」か

 推進派は、規制から解放された起業家が技術革新を起こし、地元の貧困解消や頭脳流出の歯止めにもつながると主張する。創設者エリック・ブリメン氏も、貧困救済の取り組みとして立ち上げたと説明している。

 一方、ノーベル経済学賞受賞者で元世界銀行チーフエコノミストのポール・ローマー氏は、私設都市の理念には賛同しつつも、プロスペラは富裕層が自分たちだけを隔離する囲い込み住宅地にすぎないと批判した。登録企業約500社のうち現地に実体があるのは30社ほどで、租税回避の温床だとの指摘もある。

 ホンジュラスの前左派政権は、主権への侮辱だとして合意の破棄に動いたが、合意を結んだ保守政党が政権に返り咲いたことでプロスペラは存続した。トランプ大統領が麻薬カルテル絡みの収賄などで米国で禁錮45年の判決を受けた同党の元指導者を恩赦した背景に、トランプ氏の大口献金者でもある出資者たちの働きかけがあったのではないかと批判者の間ではささやかれているが、疑惑の域を出ない。

 同様の私設都市構想はカリブ海ネビス島の「デスティニー」やドナウ川沿いの「リベルランド」など各地にあるが、実際に形になっているのはほぼプロスペラだけだ。

 現在の定住者はおよそ200人。それでも運営側は、20〜30年後に人口10万人の都市になると見込んでいる。死すら選択制にしようとする者たちの実験が、人類の新しい統治モデルになるのか、それとも億万長者の蜃気楼に終わるのか。その答えは、カリブの小島でいまも建設中だ。

参考:Daily Mail、ほか

TOCANA編集部

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