9.11の半年前、旅客機を世界貿易センターへ…『ローン・ガンメン』の不気味な一致

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画像:Robert J. Fisch / Wikimedia Commons(CC BY-SA 2.0)

 米同時多発テロのおよそ半年前、乗っ取られた旅客機がニューヨークの世界貿易センタービルへ向かうという筋書きのドラマが、全米で放送されていた。

 手がけたのは、『ブレイキング・バッド』の生みの親として知られるヴィンス・ギリガン氏ら、『X-ファイル』の制作陣だ。作品の名は『ローン・ガンメン』。事件当日、制作者自身もこの一致に戦慄していたという。

『X-ファイル』の名脇役3人組が挑んだ「ボーイング727乗っ取り計画」

『ローン・ガンメン』は、『X-ファイル』に登場する陰謀オタクの3人組、バイヤーズ、フロハイキー、ラングリーを主人公に据えたスピンオフ作品だ。初回が放送されたのは2001年3月4日。9.11のほぼ半年前にあたる。

 問題となるのは、その初回エピソードの筋書きである。米政府内部の「はぐれ分子」が遠隔操作技術を使い、乗客を乗せたボーイング727を乗っ取るという極秘計画が描かれた。

 計画の狙いは、事件を外国のテロリストの仕業に見せかけて戦争を引き起こし、米国の軍需産業に莫大な利益をもたらすことだった。遠隔操作された機体はニューヨークの世界貿易センタービルへと向かい、3人はツインタワーへの激突を阻止しようと奔走する。

 ドラマでは、3人が土壇場で遠隔操作を無効化し、墜落は回避される。多数の犠牲者を出した現実の事件とは、結末がまったく異なっていた。

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画像は「Amazon」より

事件の朝、共同制作者の脳裏に真っ先に浮かんだ番組

 この一致について、共同制作者のフランク・スポトニッツ氏は、テレビ芸術科学アカデミー(Television Academy)のインタビューで当時の心境を振り返っている。

 スポトニッツ氏によれば、あの朝の惨状を目にして最初に頭に浮かんだのが『ローン・ガンメン』だったという。実行犯が自分たちの番組を見て、そこから発想を得たのではないか。そんな恐怖に襲われたと明かしている。

 ただし、1年ほど後にある情報を目にし、その不安からは解放されたとも語っている。具体的に何を読んだのかは明かされていない。

 ギリガン氏も同じインタビューで、事件当日にFOXの撮影所へ出勤した日のことは決して忘れないと述べている。経営陣も含め誰もが衝撃を受けていた。上層部はいったん、仕事を止めればテロリストに屈することになるとして作業継続を指示したものの、現場では人々が呆然と顔を見合わせるばかりだったという。結局、判断は撤回され、全員が帰宅を命じられた。

初回1,300万人超、わずか13話で幕を閉じた番組が残したもの

 初回は1300万人を超える視聴者を集めたが、その後は視聴者をつなぎ止められず、FOXはわずか13話で打ち切りを決めた。最終話の放送は2001年6月で、事件の数カ月前には番組そのものが終わっていたことになる。

 制作側は番組の方向性について、多くの番組と同じく自然な流れで形になっていったとの趣旨を語っている。スポトニッツ氏は、当初は自分たちでも番組の正体をつかみきれず、第2話あたりからようやく進むべき方向が見えてきたと振り返る。

 つまり制作者の言葉から浮かぶのは、事件を「予言」した作品というより、試行錯誤の中で生まれた陰謀エンタメの姿だ。初回の筋書きと現実の一致は、偶然と見るのがもっとも自然だろう。

 それでも、フィクションが想像した「最悪のシナリオ」が、わずか半年後に現実の悲劇と重なったという事実は変わらない。画面の中で3人が最後の一瞬に食い止めた惨事を、現実は止めることができなかった。その落差こそが、25年を経た今もこのエピソードが語り継がれる理由なのかもしれない。

参考:LADbible、ほか

TOCANA編集部

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