「自由の女神が見えるオフィスにいた」3歳児が語り続けた死の記憶…… 母が辿り着いたのは9.11で亡くなった男性の訃報だった

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 幼い子どもが、経験したはずのない出来事を突然口にする。いわゆる「前世記憶」の報告は世界各地にあるが、その多くは断片的で、成長とともに自然に薄れていく。

 だが米国で暮らすケード・ウィルソン君のケースは違った。3歳の彼が語り始めた「記憶」は消えるどころか、日を追うごとに細部を増していったという。しかもその内容は、2001年9月11日にニューヨークで起きた出来事とぴたりと重なるものだった。

「ビルと一緒に落ちた。それが僕の死に方だった」

 始まりは、深夜だった。ケード君は夜中に泣きながら目を覚ますようになり、母親のモーリー・カーナッティさんに、自分は高いビルで働いていたのだと訴えた。オフィスの窓からは自由の女神が見えたのだという。

 そして、そのビルと一緒に落ちていった——それが自分の死に方だったのだと、幼い息子は説明した。

 母親は当初、深刻には受け止めなかった。少し変わった発言として頭の片隅に留めはしたものの、想像力の豊かな子どもがよく口にする類のものだろうと考えていたと振り返っている。

 父親のリックさんも同じ見方だった。ケード君はニューヨークを訪れたことすらなく、親族にワールドトレードセンターと縁のある人間もいない。息子があの光景を知っている理由は見当たらなかった。

飛行機を「怪物」のように怖がる少年

 悪夢が始まってまもなく、ケード君に変化が現れる。母親が強迫的とまで表現するほどの、航空機への恐怖だ。

 ただし彼が怯えていたのは、飛行機に乗ること自体ではなかった。その飛行機がどこへ向かおうとしているのか、そちらを恐れているように見えたという。祖母のフェイさんは、まるで怪物でも見ているかのように完全に怯えきっていたと語る。

 高層ビルへの反応も同様だった。ダウンタウンを車で通り抜けようとするとケード君は取り乱してしまい、家族は市街地を走ることさえ難しくなった。

 転機となったのは、彼の言葉が漠然とした恐怖から具体的な描写へ変わったときだった。自分は何かがぶつかったビルの中にいた、そこで爆発が起き、自分は落下したのだと、ケード君ははっきり口にするようになった。

 さらに彼は、自分の本当の名前はケードではないと言い張り始めたという。

画像:Robert J. Fisch / Wikimedia CommonsCC BY-SA 2.0

見知らぬ母親から送られてきた1本のリンク

 息子の言葉をどう受け止めればいいのか分からなくなったモーリーさんは、藁にもすがる思いでオンラインのフォーラムに一部始終を書き込んだ。

 反応したのは、一人の母親だった。彼女が送ってきたリンクの先にあったのは、ワールドトレードセンターに勤務し、9.11で命を落としたある男性の情報。その生前の歩みと最期が、ケード君の語る内容と重なるというのだ。

 モーリーさんは男性の訃報記事と写真を開き、一致の多さに息を呑んだと語っている。ただし彼女は、男性の遺族に連絡を取ってはいない。他人の悲しみのプロセスに踏み込むべきではないと考えたためだという。

 もっとも、この符合が何を意味するのかは分からないままだ。テレビ映像や大人たちの会話から断片的な情報を吸収し、それを自分の物語として組み立ててしまう可能性は、幼児の記憶研究でもしばしば指摘されている。

 一方で、前世を語る子どもの事例は半世紀以上にわたって世界中で収集され、今も検証の続く領域でもある。ケード君の証言をどちらに置けばいいのか、判定する材料は現時点で存在しない。

 家族が直面しているのは、むしろ日常のほうの現実だ。ケード君は他の子どもたちから嘘つき呼ばわりされ、近所には自分の子を彼と遊ばせたがらない親もいる。授業中の言動に手を焼く教師も出てきた。モーリーさんは、我が子には誰からも好かれてほしいだけなのだと語り、胸が張り裂けそうだと打ち明けている。

 両親が今いちばん望んでいるのは、真相の解明ではない。ケード君がケードとして生き直し、子どもらしく笑えるようになること。母親は、きっとそこまで辿り着けると信じていると語る。

 前世の記憶なのか、幼い脳が組み上げた物語なのか。答えを出せる者はいない。ただ確かなのは、その「記憶」が3歳の少年から普通の子ども時代を奪ってしまったという一点だけだ。

参考:Unilad、ほか

TOCANA編集部

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