火星の人面岩もピラミッドも古代の”波打ち際”に並んでいた!? NASA画像が呼び覚ます失われた都市説

火星の人面岩もピラミッドも古代の"波打ち際"に並んでいた!? NASA画像が呼び覚ます失われた都市説の画像1
画像は「Daily Mail」より

 1976年、バイキング1号が撮影した一枚の写真が世界を騒がせた。火星のシドニア地区に横たわる、人の顔にしか見えない巨大な地形——通称「人面岩」である。

 それから半世紀、この地区がまた議論の的になっている。NASAの火星周回機が捉えた画像に、ごつごつした高地となめらかな盆地を分ける、奇妙なほどくっきりした「境界」が写っているというのだ。

 そして人面岩もピラミッド状の丘も、その線に沿って並んでいる。かつてここには水があり、その岸辺に都市が築かれた——そんな主張が浮上している。

高地と盆地を分ける「線」に、名だたる地形が並ぶ

 シドニア地区には、名前を与えられた地形がいくつもある。人の顔に見える「フェイス(人面岩)」、五角形に近い輪郭から「D&Mピラミッド」と呼ばれる丘、建造物の廃墟のように見える一群「シティ」。

 いずれも自然地形として説明されてきたが、今回注目されたのはその「配置」だ。軌道画像では、片側は起伏に富んで目立つ地形が集中し、もう片側は平坦に広がっている。この変わり目こそ、かつて水面があった場所ではないか——という見立てである。

 画像から「古代の海岸線」の推定位置が示された。すると名の知られた地形の多くが、この線に沿って分布して見えるという。偶然にしてはできすぎている、というのが出発点だ。

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画像は「Daily Mail」より
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画像は「Daily Mail」より

ヴェネツィア、アレクサンドリア、マンハッタン——水辺に都市を築く人類の癖

 この見立てを唱えているのは、UFO研究家のジェイソン・マーテル氏。米ヒストリーチャンネルの番組『古代の宇宙人』に常連ゲストとして出演している人物だ。

 マーテル氏は自身のブログで、シドニアの地形の並び方が、人類史を通じて築かれてきた「水辺の都市」と重なると指摘した。挙げた比較対象は、ヴェネツィア、アレクサンドリア、アムステルダム、シンガポール、ドバイ、マンハッタン。さらに古くはナイル河畔のメンフィス、ユーフラテス川沿いのウル。

 水辺は食料も交通も交易路も手に入る。だから人類はそこに集まり、集落を都市へ膨らませてきた。シドニアの地形が人工物なら、盆地の縁という立地も地球の文明と同じ論理で説明できる——という筋立てだ。

 マーテル氏はさらに踏み込む。記念碑的な建造物は周囲の集落や水路から見える位置に据えられることが多い。ならば人面岩は、水辺と「都市」の両方を見下ろすモニュメントだったのではないか、というのである。

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画像は「Daily Mail」より

パレイドリアという厚い壁

 ただし、この主張には決定的に欠けているものがある。地質学的な裏付けだ。

 なめらかな盆地が広がっているというだけでは、そこに海や湖があった証拠にはならない。地表の急激な変化は、水以外の自然作用でも生まれる。堆積物の分析も地質調査の結果も、この説には添えられていない。

 そもそも「海岸線」は画像から想像したものであり、どこを通すかは見る人の解釈次第だ。線の引き方を少し変えれば、どんな地形も何かに沿って並んでいるように見せられる。

 そして最大の壁がパレイドリアである。人間の脳は、ランダムな模様のなかに顔や規則的なパターンを見つけ出すようにできている。天井のシミが人の顔に見えるのと同じ仕組みだ。人面岩もピラミッドも、特定の太陽角度と視点で撮影されたときにだけ人工物らしく見える自然地形なのかもしれない。

 さらにこの主張は、論理としても円を描いている。「記念碑は見晴らしのいい場所に建つ」という前提を火星に当てはめるには、まず人面岩が記念碑だと認めねばならない。だがそれこそが、証明されるべき主張そのものだ。

 興味深いのは、唱えた側もその弱さを自覚している点である。マーテル氏は自分が地質学者ではないことを認め、地表の違いが本当に水によるものかは専門家の判断が必要だとしたうえで、なお目に見える手がかりは十分に説得力があるとし、シドニアは火星版の「ウォーターフロント物件」だったのではないかと語る。

 現時点で言えるのは、これが軌道画像に対する想像力豊かな解釈であって、失われた都市や古代文明の証拠ではないということだ。ただし、火星にかつて大量の液体の水が存在したこと自体は、各国の探査によって繰り返し裏付けられてきた事実でもある。

 水があった惑星の、水際に見える場所——そこに何かを探さずにいられない人間の性分こそが、半世紀たってもシドニアを手放せずにいる本当の理由なのかもしれない。

参考:Daily Mail、ほか

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