ネット発の怪異「スレンダーマン」6つの不穏な事実。都市伝説はいかにして現実を侵食し、凄惨な事件を引き起こしたのか

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 吸血鬼にも河童にも、はっきりした誕生日はない。誰かが語り、誰かが継ぎ足すうちに、いつの間にかそこにいた——それが怪物というものだ。

 だが「スレンダーマン」だけは違う。生まれた日も、生んだ人物のハンドルネームも記録に残っている。そして誕生からわずか5年後、この完全な作り物は現実の刺傷事件を引き起こした。ネットが産んだ現代の都市伝説をめぐる、6つの不穏な事実を見ていこう。

誕生日は2009年6月10日——設計図はラヴクラフトとモスマンだった

1. 始まりは掲示板の「加工写真コンテスト」

 米国の掲示板サイト「Something Awful」に、エリック・クヌードセン(ハンドルネーム:ヴィクター・サージ)が2枚のモノクロ写真を投稿した。「最も怖い加工写真を作れ」というお題への回答だ。

 写っているのは、ごく普通の子どもたち。だがその背後に、異様にひょろ長く、顔のない黒服の男が立っている。

 決め手は添えられた偽の説明文だ。1枚目は1983年撮影、撮影者は不明で死亡と推定。2枚目は子ども14人が消えた1986年のある日の1枚で、撮影者も同年6月13日から行方不明——。この作り込みが、コラージュを「記録」に見せた。

2. 設計図に組み込まれた元ネタたち

 2011年のインタビューでクヌードセン氏は、H・P・ラヴクラフト、スティーヴン・キングの短編群、ウィリアム・S・バロウズ、ホラーゲーム『サイレントヒル』『バイオハザード』を影響源に挙げている。「シャドーピープル」の伝承やUMAのモスマンも名前が出た。

 狙いは、動機がまるで理解できない存在をつくり、社会に漠然とした不安と恐怖を植えつけることだったという。

身長4.6m、テレポート、機器のノイズ——設定は勝手に増えていった

3. 10日で動画、3年でゲームになった

 最初の投稿からわずか10日後、映画を学ぶ大学生3人が『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』風のフェイク映像を制作した。撮影中の企画がスレンダーマンに侵食されていく内容だ。

 その後は4chanやCreepypastaで語りが増殖し、2012年にはゲーム『Slender: The Eight Pages』が登場。2016年にドキュメンタリー『Beware the Slenderman』、2018年には劇場版ホラー『スレンダーマン』も公開された。

4. 能力はすべて「後付け」

 黒いスーツ、のっぺらぼうの顔、触手のように伸びる四肢。身長は6〜15フィート(約1.8〜4.6m)と語り手によって幅がある。

 テレポート、精神操作、標的に妄想や咳、鼻血を起こさせる力。近くにいるとカメラやテレビにノイズが走る——。設定資料も許可も必要なく、こうした「仕様」が世界中から追加されていった。

5. 学者が指摘した、妖精との不気味な一致

 ユタ州立大学のリン・マクニール准教授は、物語も信仰もイメージも口伝的な文化の中で流通している点で、スレンダーマンはフォークロアの条件を満たすと指摘している。

 思い出したいのが、中世以来ヨーロッパで語られてきた妖精だ。森に潜み、子どもをさらう。森・子ども・神隠しという骨格はそっくりだ。クヌードセン氏自身、天使やサキュバスの現代版として位置づけていた。

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「彼を怒らせたらどうなるか、知りたくなかった」

6. 作り物が招いた、現実の凶行

 2014年5月31日、ウィスコンシン州ウォキショーの森で、12歳の少女2人が同い年の友人を19回にわたって刺した。

 2人はスレンダーマンが実在し、州内の森に住んでいると信じていた。友人を殺せば彼の「使い」になれ、その邸宅で暮らせると考えていたという。やらなかったら何が起きるか分からず、それを知りたくなかった——加害少女の一方は後にそうした趣旨の説明をしている。

 刺された少女は一命を取り留めた。加害少女は統合失調症、PTSDなどと診断され、精神科施設で40年と25年の処遇を受けた。一方は2021年に監督付きで社会復帰。もう一方は2025年にグループホームへ移されたが、逃走を図って施設に戻されている。

 同じ2014年、オハイオ州では13歳が母親を刃物で襲い、母親は娘がスレンダーマンに傾倒していたことを理由に挙げた。フロリダ州では14歳が彼を喜ばせるために自宅へ放火したとされる。

 架空の怪物をなぞった凶行自体は、スレンダーマン以前にも起きている。だが河童や口裂け女と決定的に違うのは、この怪物には誕生の日付と投稿者のハンドルネームが残っていることだ。

 誰が、いつ、遊びで作ったかまで判明している存在ですら、5年で人を刺させる力を持った——。ならば、起源が誰にも分からない怪物たちが、いま何をしているのかを確かめる術は、我々にはないのかもしれない。

参考:Mental Floss、ほか

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