ネット都市伝説「The Backrooms(バックルーム)」とは? 映画スタジオA24が注目した“現実のバグで落ちる無限の部屋”

インターネットの深淵には、誰もが一度は夢で見たことがあるような、しかし絶対に足を踏み入れたくない「空間」が存在する。
古びて湿った絨毯のにおい、狂気を誘う単一の黄色い壁紙、そして大音量で鳴り響く蛍光灯のハム音——。広さ約6億平方マイルにも及ぶとされるその果てしない廃墟空間は「The Backrooms(バックルーム)」と呼ばれ、今やハリウッド映画にまで発展するほどの巨大なネットミーム(都市伝説)となっている。
なぜ私たちは、この何もない黄色い部屋にこれほどまでに惹きつけられ、恐怖するのだろうか。
すべては匿名掲示板の「1枚の画像」から始まった
事の発端は2019年、海外の匿名掲示板「4chan」に投稿された1枚の画像だった。
少し画質の粗いその写真には、黄色い壁紙が貼られた空っぽの部屋が、まるで無限の迷路のように奥へと続いている様子が写っていた。
その画像には、匿名の投稿者によってこんな不気味なテキストが添えられていた。
「もしあなたが不用意に現実世界から『バグ抜け(noclip)』してしまったら、バックルームに落ちてしまう。そこには湿った古い絨毯の悪臭と、狂いそうなほど黄色い壁、そして蛍光灯の果てしないノイズしかない。もし近くで『何かが歩き回る音』を聞いたなら、神に祈るしかない。なぜなら、それも確実にあなたの音を聞いているのだから」
日本で言うところの「きさらぎ駅」や「八尺様」のように、この投稿は瞬く間にネットユーザーの想像力を掻き立てた。有志のクリエイターたちによって「別の階層(レベル)」や「そこに棲む怪物(エンティティ)」などの設定が次々と書き足され、巨大なシェアワールド(共同創作の世界)へと成長していったのだ。
映画スタジオ「A24」が目をつけたネット怪談
バックルームの勢いはネット掲示板にとどまらない。2022年、当時まだ10代だったケイン・パーソンズという若者が、このバックルームを舞台にした不気味なCGショートフィルム(ファウンド・フッテージ形式)をYouTubeに投稿し、爆発的な再生回数を記録した。
そしてついに、この才能に目をつけたのが、『ミッドサマー』や『ヘレディタリー/導かれし者』など、不穏でエッジの効いた作品を生み出すことで知られるアメリカの気鋭映画スタジオ「A24」だ。パーソンズ監督を抜擢して制作された長編映画版『The Backrooms』は、2026年5月に全米で劇場公開され、ネットの怪談がいよいよメインストリームのカルチャーへと昇華された瞬間となった。
ちなみに、長年謎だった「最初の画像の撮影場所」は、ネット特定班の執念によって2024年にウィスコンシン州オシュコシュにあるホビーショップ(現在はRCカーのレーストラック)の改装中の写真であることが判明している。今ではオカルトファンたちの「聖地巡礼」の場となっているというから、ネット民の行動力には恐れ入る。
なぜ私たちは「何もない部屋」が怖いのか?
それにしても、幽霊も血みどろの殺人鬼も映っていない「ただの空っぽの部屋」が、なぜこれほどまでに人を不安にさせるのだろうか。
カーディフ大学の研究によれば、その恐怖の正体は「リミナルスペース(境界空間)」と「不気味の谷現象」にあるという。
バックルームの画像は、私たちがよく知っているオフィスビルの裏側や、子供の頃に遊んだような地下室の記憶とよく似ている。しかし、「日常の風景」に限りなく近いのに、家具も窓も人の気配も一切ないという「異常な空虚さ」が、私たちの脳に「何かが決定的に間違っている」という強烈なエラー信号を引き起こすのだ。
別の視点からは、この空間が「現代社会の虚無感」を体現しているという指摘もある。窓のない窮屈なオフィスで人生の大半を過ごす現代人にとって、この無限の黄色い部屋は、逃げ場のない現代社会そのもののメタファーなのかもしれない。
いずれにせよ、バックルームの引力は当分消えそうにない。私たちは皆、スマホの画面を見つめながら、気づかないうちにこの黄色い蛍光灯の異次元に「バグ抜け」してしまっているのかもしれない。
バックルームの伝承によれば、ここから脱出する方法はただ一つ。「偶然、もう一度現実世界へとバグ抜けすること」だという。もしこの世界へ落ちてしまったら、どうか後ろから足音が近づいてくる前に、無事に元の世界へ戻れることを祈ろう。
参考:MENTAL FLOSS、ほか
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2024.10.02 20:00心霊ネット都市伝説「The Backrooms(バックルーム)」とは? 映画スタジオA24が注目した“現実のバグで落ちる無限の部屋”のページです。都市伝説、バグ、バックルームなどの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで
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