eBayに出品された「呪いの絵画」 – アートと都市伝説、恐怖のマーケティングが生んだ謎

アート、マーケティング、そして都市伝説。これらの境界線を曖昧にする、一枚の不気味な呪いの絵画が、インターネットオークションサイト「eBay」を舞台に世界を震撼させたことがある。その名は『The Hands Resist Him(直訳すると“手が彼に抵抗する”)』。
eBayを騒然とさせた不気味な出品
その呪いは2000年2月に始まった。eBayに、奇妙で不穏な雰囲気を漂わせる一枚の絵画が出品されたのだ。描かれているのは、とある玄関ポーチ。暗い窓の前には少年と一体の人形が立っている。窓の向こうには、かろうじて数多くの子供たちの手が見えるだけだ。人形の眼窩は虚ろで、少年の目もほとんど見えないが、その視線は鑑賞者をまっすぐに見据えている。少年だけが照らされ、人形は壊れたバッテリーのようなものを持っている。そして、欠けた月がすべてを見下ろしている。開始価格は199ドルだった。
この絵画がeBayに出品された際に添えられた説明文が、すべての始まりだった。所有者だと名乗る人物は、廃墟となったビール工場でこの絵画を発見したと主張。しかし、家に持ち帰って以来、家族に次々と不気味な出来事が起こるようになったというのだ。
説明文にはこう書かれていた。「ある朝、4歳半の娘が、『絵の中の子どもたちが喧嘩して、夜中に部屋に入ってくる』と言い出したのです」。この絵画は、出品からわずか5日間で3万回以上も閲覧された。
拡散する恐怖と都市伝説
この呪いの絵画のオークションは瞬く間に拡散され、ユーザーたちはその周りに様々な物語を紡ぎ始めた。「見ていると気分が悪くなる」「頭痛がする」「PCのある部屋に暗い気配を感じる」「画面で見ているだけで声が聞こえる」…。絵画にまつわる都市伝説は際限なく生まれ、中には「窓の中の手は、ビール工場で焼け死んだ子供たちのものだ」「人形は銃を持って少年を脅している」といったものまであった。
オークションが終了し、新たな所有者がその起源をたどって作者に連絡を取ったことで、ようやく絵画の真実の一部が明らかになる。
作者が語る真実と、新たな謎
この絵画は匿名ではなく、1972年にポストモダン・シュルレアリスムの画家ビル・ストーンハムによって描かれたものだった。彼はこの作品をビバリーヒルズのファインガルテン・ギャラリーに売却。そこでロサンゼルス・タイムズ紙の美術評論家ヘンリー・セルディスの目に留まり、記事として紹介された。

この記事がきっかけとなり、映画『ゴッドファーザー』で有名な俳優ジョン・マーレイがこの絵画を購入した。その後、絵画の行方は分からなくなっていたが、廃墟のビール工場で再発見された、という経緯だった。
eBayの出品ページには、こんな一文も添えられていた。「この絵画に入札することにより、購入者は、販売に関連するすべての責任、および販売後にこの絵画に起因する可能性のあるいかなる出来事からも、所有者を免責することに同意するものとします」。
作者のストーンハム氏はインタビューに応じ、作品の意味について語った。この絵画は彼の幼少期を描いたものであり、少年は彼自身の自画像、人形は一種のスピリチュアルなガイド、そして窓の中の手は、彼が人生で選び得た様々な可能性の道を象徴しており、それらが暗い不確実性に取り囲まれている様子を表しているという。
作品のタイトルは『The Hands Resist Him / 手が彼に抵抗する』。ギャラリーから月に2枚のペースで依頼されて描いた作品の一つであり、皮肉にも、これが唯一売れた作品だったという。
関係者の相次ぐ死… 偶然か、呪いか?
作者自身の解説によって、呪いの伝説は解明されるかに思われた。しかし、ストーンハム氏がインタビューで語ったある奇妙な事実が、意図せずして伝説をさらに増幅させることになる。それは、この絵画を最初に展示したギャラリーのオーナーと、それを評価した美術評論家が、絵画の展示から1年後に相次いで亡くなっている、というものだった。
これはほぼ真実である。美術評論家のセルディスは、批評を発表した翌年の1978年に自宅アパートで遺体で発見された(警察によれば自殺とみられる)。ギャラリーオーナーのチャールズ・ファインガルテンは、絵画が売却された1年後の1981年に亡くなっている。そして、奇妙な偶然はこれで終わらない。最初の購入者である俳優ジョン・マーレイは、1983年頃にこの絵画を手放したとされるが、その1年後の1984年に亡くなっているのだ。最終的に、この絵画はeBayで1025ドルで落札された。

呪いは続く?
ミシガン州のパーセプション・ギャラリーのオーナー、キム・スミス氏は、この物語を知って魅了され、eBayで「呪いの絵画」を購入した。
不気味なオーラ、奇妙なマーケティング手法、そして関係者の相次ぐ死。これらの要素が絡み合い、『The Hands Resist Him』は偶然と不可解の間を揺れ動き続ける。この絵画には、その「悪魔的なオーラ」について書かれた本まで存在し、作者ストーンハム氏に2005年から新たなシリーズ作品を描かせるきっかけを与え、アメリカで最も呪われた絵画と見なされるようになった。
eBayの広告文はこう締めくくられている。「この絵画は、あなたの人生に影響を与え、変えるかもしれない超自然的な力を持っているかもしれないし、持っていないかもしれません」。
関係者を次々と襲った不幸な偶然。その連鎖は、まだ終わっていないのかもしれない。
参考:Espacio Misterio、ほか
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2024.10.02 20:00心霊eBayに出品された「呪いの絵画」 – アートと都市伝説、恐怖のマーケティングが生んだ謎のページです。呪い、絵画、eBayなどの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで