自ら撃つには不自然すぎる“弾道”が示す他殺の影。ロスアラモス女性職員を襲った不穏な最期

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 米国の核兵器研究の中枢、ロスアラモス国立研究所(LANL)に勤めていた53歳の女性が、自宅から歩いて出たきり姿を消した。

 約11か月後、彼女は10キロ弱離れた国有林の奥で白骨となって発見される。頭部には銃創があったが、検死の結論は「判定不能」——自殺か他殺かすら決められない、というものだった。

 そして失踪から1年、遺体のそばに落ちていた1丁の拳銃をめぐり、新たな情報が伝えられている。

バッジを取りに引き返した女性は、そのまま消えた

 メリッサ・カシアスさんが最後に目撃されたのは2025年6月26日のことだ。

 その日、彼女は夫のマーク氏をLANLへ送り届けている。夫妻はいずれも研究職ではなく事務スタッフだった。バッジを忘れたとしていったん自宅へ戻り、娘の勤務先に昼食を届けた後、午後2時20分ごろ、州道518号沿いを一人で歩く姿を最後に消息を絶った。

 不可解なのは自宅に残されたものだ。彼女の携帯電話2台が置き去りにされ、そのいずれもが失踪当日にデータを完全に消去されていたという。

 遺体が見つかったのは2026年5月28日。ニューメキシコ州タオスの自宅からおよそ6マイル(約9.7km)離れたカーソン国有林の奥だった。検死では死亡した時期に頭部を撃たれたことが確認されたが、腐敗が著しく、自殺か事件かは判断できず、発砲時の銃口と頭部の距離も特定できなかったとされる。

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画像は「Daily Mail」より

「反動で銃は真上に跳ね上がるはず」——弾道をめぐる指摘

 新たに伝えられたのは、遺体の近くにあった拳銃の出どころだ。英Daily Mailの取材に対しニューメキシコ州警察は、その銃が夫のマーク氏が2020年に購入した黒いスプリングフィールド社製の拳銃だったことを認めたという。同氏は狩猟愛好家として知られる。

 ただし州警察は、捜査が継続中であるとする一方、容疑者を特定しているのか、夫から事情を聞いたのか、その銃が発砲されたのかは明らかにしていない。現時点で誰かの責任が公的に問われている段階ではない。

 論議の的は、新たに公開された検死の図面が示す銃弾の推定経路だ。頭蓋底の右側、下顎と首が頭部に接するあたりから入り、最上部の頸椎であるC1を損傷して左のこめかみを貫いたとみられている。銃弾そのものは回収されていない。

 法執行機関の匿名の関係者は同紙に対し、この経路を自ら撃って作り出すには極めて不自然な角度で銃を保持する必要があり、反動で銃は真上に跳ね上がるはずだと指摘。所見はむしろ他殺を示唆するとの見方を示しているという。

 とはいえこれは匿名の一証言であり、州当局の公式見解はあくまで「判定不能」だ。

遺族の中でも割れる見方、そして「消える科学者」たち

 遺族側の動きも一様ではない。捜査への不信から親族が依頼した弁護士のデイビッド・アダムス氏によれば、警察が現場の検証を終えて引き上げたあと、家族やボランティアが血の付いた衣類や骨、本人のものとは異なるように見える毛髪、たばこの小袋などを見つけた。

 カシアスさんに喫煙の習慣は知られていなかったという。親族は8月7日、彼女が自ら命を絶ったとは考えていないとSNS上で表明した。

 一方、生前の彼女を最後に見たとみられる娘のシエラさんは、こうした私的な調査とは関係がないとしたうえで、他殺を前提とする見方に反論している。地元局KOAT 7によれば、「判定不能」という判断は誰かが母の死の責任を問われたことを意味せず、証拠が裏付けていない筋書きを作る機会にすべきでもない、という趣旨を述べたという。

 シエラさんによれば、遺体の近くでは母のリュックが見つかり、中には銃のホルスターが入っていた。周辺には酒の瓶や、メモの可能性がある紙片もあったという。

 背景を複雑にしているのが勤務先だ。この1年、米南西部ではLANLの元職員や、同研究所と軍の関係を統括していた元米空軍の将官マキャスランド氏ら、10人以上の核関連施設職員やNASAの科学者、軍関係者が「消える科学者」問題として結び付けられてきた。

 ホワイトハウスはFBIに関連性の調査を指示したが、アダムス弁護士によれば、FBIがカシアスさんの件を調べている形跡は確認できていないという。

 元FBI捜査官のベン・ハンセン氏も、ポッドキャスト番組「Brian Entin Investigates」で、公表された情報はきわめて不審で、自死というより事件性がある可能性が8割方高いのではないかとの私見を語っている。

 データを消された2台の携帯電話。撃ち抜かれた頭蓋骨と、見つからない銃弾。どれも不穏だが、これらを一本の線でつなぐ証拠は、少なくとも公にはまだ存在しない。娘が釘を刺したように、判定不能とは「誰かが犯人だと分かった」という意味ではない。だが同時に、「何も起きていなかった」という意味でもないのだ。

参考:Daily Mail、ほか

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