【世界で最も有名な行方不明者】「ここでは死にたくない!」と叫び、空港から猛ダッシュして消えたドイツ人観光客の未解決失踪事件

もしあなたが海外旅行先で怪我をして、一人だけ帰りの飛行機を遅らせることになったらどうだろうか。ただでさえ不安な状況だが、もしその時「誰かに命を狙われている」と感じたら?
2014年7月、ブルガリアの空港でカメラが捉えた一人のドイツ人青年の姿は、世界で最も奇妙で有名な未解決失踪事件の一つとして、今もネットのオカルトファンや特定班を惹きつけてやまない。「世界で最も有名な行方不明の観光客」と呼ばれる、ラース・ミタンク(当時28歳)の不可解な失踪事件だ。
サッカーファン同士の小競り合いが招いた悲劇
事件の始まりは、よくある若者の小競り合いだった。
ミタンクは友人たちとブルガリアの保養地ヴァルナを訪れていた。彼にとって初めての海外旅行だったという。旅の最終日である7月6日、ドイツのサッカーチーム「ヴェルダー・ブレーメン」のファンだった彼らは、「バイエルン・ミュンヘン」のファンと口論になった。
その騒動の中でミタンクは友人たちとはぐれ、戻ってきたときには顎を殴られ、鼓膜が破れるほどの怪我を負っていた(殴ったのがバイエルンのファンなのか、彼らに雇われた地元民なのかは諸説ある)。
診察した医師は、気圧の変化による耳の悪化を防ぐため、飛行機での帰国を遅らせ、抗生物質(セフプロジル)を飲んで安静にするよう指示した。
友人たちを先に帰国させ、一人で空港近くのホテルにチェックインしたミタンク。しかし、ここから彼の様子は急激におかしくなっていく。
彼はドイツにいる母親に電話をかけ、「誰かに後をつけられている」「クレジットカードを止めてくれ」と切羽詰まった声で訴えたのだ。異国の地で一人、彼は「殺されるかもしれない」という異常な恐怖に支配され始めていた。

「ここでは死にたくない!」 空港のカメラが捉えた最後のダッシュ
そして運命の帰国日。ミタンクは空港の医務室を訪れ、医師のコスタ・コストフから「飛行機に乗っても大丈夫だ」と許可を得た。しかし、この時の彼は極度に神経質になっていたという。
そこへ、偶然ひとりの建設作業員が医務室に入ってきた。
ただそれだけのことだったが、ミタンクにとってはそれが「決定的な引き金」となった。
医師の証言によると、ミタンクは突然パニックを起こし、「ここでは死にたくない! ここから逃げ出さなきゃ!」と叫んで医務室を飛び出したというのだ。
空港の防犯カメラは、彼が荷物も携帯電話もすべて放り出し、パニック状態でターミナルを猛ダッシュで駆け抜け、空港の外へ飛び出していく姿を鮮明に捉えている。そして彼は、空港の敷地を囲むフェンスを乗り越え、近くの森(ひまわり畑)の中へと姿を消した。
それが、ラース・ミタンクの姿を捉えた最後の記録となった。
麻薬密輸か、抗生物質の副作用による幻覚か
あれから11年が経過した現在も、ブルガリア当局による大規模な捜索にもかかわらず、彼がどうなったのか、遺体すら見つかっていない。
ネット上では、この不可解な「空港ダッシュ」について様々な陰謀論が飛び交っている。
「実は麻薬の密輸に巻き込まれていて、本当にマフィアに追われていた」というサスペンス映画のような説から、「人身売買組織に拉致された」「耳の怪我による脳へのダメージだ」という説まで様々だ。
中でも有力視されているのが、「処方された抗生物質(セフプロジル)が、極度のストレスと合わさって重度の精神病エピソード(幻覚や被害妄想)を引き起こしたのではないか」という医学的な見解である。
しかし、もし彼がただの幻覚で森に逃げ込んだだけなら、なぜ10年以上も一切の痕跡が見つからないのだろうか。
「ここでは死にたくない」と叫び、荷物をすべて捨ててまで彼が逃げたかった“何か”。それは彼の脳が作り出した幻影だったのか、それとも本当に“見えない暗殺者”が迫っていたのか。
初めての海外旅行ではしゃいでいた若者は、防犯カメラの映像の中に永遠の謎を残し、今もどこかの異国の地で走り続けているのかもしれない。
参考:LADbible、ほか
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