>  > 【死刑囚の実像】“不器用すぎる”凶悪殺人者・高橋明彦と会う

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――人を殺した人と会う。死刑囚の実像に迫るシリーズ【19】

 社会を震撼させた凶悪殺人事件の犯人と会ってみると、案外普通の人物であることは少なくない。5年前に福島県であった夫婦殺害事件の犯人・高橋明彦(50)もそうだった。何の落ち度もない2人の生命を奪い、死刑囚へと身を落とした男の実像とは――。


■裁判員まで苦しめた凄惨な犯行

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画像は、凄惨な事件の現場となった会津美里町の小さな集落

 事件は2012年7月26日の早朝、福島県会津美里町の小さな集落で起きた。50代の夫婦が自宅に押し入ってきた男に刃物でメッタ刺しにされて殺害され、現金やキャッシュカードを奪われるという痛ましい事件だった。翌日、現場近くの空き家の敷地に車を置き、妻と一緒に車上生活をしていた男が強盗殺人の容疑で逮捕されたが、それが高橋だった。

 この事件が社会の注目を集めたのは翌年3月、福島地裁郡山支部で高橋の裁判員裁判が行われた時のことだ。

「助けて―。うーうー。あんた人殺しになっちゃうよー」

 公判では、被害者の女性が事件の際、119番通報した音声が再生されたが、それは断末魔の叫びのようだったという。裁判員たちはそれに加え、血の海に横たわっていたこの女性と夫の遺体の写真も見せられた。その写真も凄惨なものだったそうで、裁判員を務めた女性の1人はショックから急性ストレス障害に陥ったほどだった。

 そんな事件だけに高橋という男はさぞや狂暴そうな男なのだろうと思いきや――。


■高橋明彦に面会

 2014年の夏、仙台拘置支所の面会室。初めて会った高橋は身長が160センチあるかないかの小柄な男だった。作業着のようなグレーの半袖シャツに短パンという姿だったが、手足は細く、力も弱そうだった。白い頭髪を短く刈り込み、口ひげとあごひげを伸ばした独特の風貌をしていたが、拍子抜けするほど威圧感のない男だった。

「上告はやめてしまうかと思ってるんだよね」

 アクリル板越しに向かい合うと、高橋はそうつぶやいた。高橋は当時、1、2審共に死刑とされて最高裁に上告しており、上告をやめれば、死刑判決が確定する状況だったのだが……。

「オレが生きて償いたいとか、被害者の方々の墓の前で手をついて謝りたいと言っても、自己満足でしかないと思ってね。もうひとつは、オレにも家族がいるんでね。オレが裁判を続けていたら、姉貴やその子供たちが苦しむと思うんだよね」

 弁明の余地がない事件を起こした高橋だが、こうした話を聞く限り、根っからの悪人ではないように思えた。こんな男がなぜ、殺人犯となったのか。

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