【死刑囚の実像】“不器用すぎる”凶悪殺人者・高橋明彦と会う ― 取材でわかった“まさかの殺人理由”とは?(会津美里町夫婦殺害事件)
■「被害者のお母さんが生きているうちに……」
髙橋は2016年3月、最高裁に上告を棄却されて死刑が確定した。私が最後に髙橋と面会したのは上告棄却の2週間後のことだった。
高橋「上告棄却は、弁護士の先生からの電報で知ったけど、頭が真っ白になったよ。今もラジオは聴かないし、新聞も見ないし、何も考えられないんだよね」
髙橋はそれ以前、「死刑は怖くない」と言ったこともあったが、やはりいざ死刑が確定すると、精神的に不安定になったようだった。獄中では被害者の冥福を祈り、写経をするのを日課にしていたが、「今は頭がボーとして、写経もできない状態だよ」とのことだった。
――やはり死刑はこわいですか。
高橋「そりゃ怖いよ。怖くなかったらおかしいでしょ。『ただ死んでいくだけ』というのはイヤだという思いもあるしね」
――『ただ死んでいくだけ』とは、どういう意味?
高橋「なんて言ったらいいのかな……被害者の遺族の方が『ありがとう』と言ってくれるなら、オレはいくらでも首をくくりますよ。でも、オレが死んでも遺族の人たちはいつまでも苦しむでしょ。その反面、被害者の男性のお母さんはお年を召されているんで、『お母さんが生きているうちになんとかしないといけない』とも思うしね」
つまり、高橋は、被害者の男性の高齢の母親が生きているうちに「息子を殺害した犯人が死刑執行された」というニュースを届けなければいけないと考えているようだった。やはり高橋は決して人の気持ちがわからない人間ではないのだろうと改めて思った。
その後、高橋は確定死刑囚の処遇になり、面会や手紙のやりとりはできなくなった。最後に届いた手紙では、
〈何かとお気付かいいただいたり、色々とはげましていただいた事を感謝致します。本当に今迄有難うございました〉(原文ママ)
と書いていたが、とくに気遣いも励ましもした覚えがない私は戸惑った。だた、家族すら誰も面会に来ない状態だった高橋にとっては、取材とはいえ、人と話すだけで気がまぎれていたのかもしれない。
生活保護を受給できると知らずに人を殺め、自分も死刑囚になってしまった高橋明彦。私はこの不器用な殺人犯と会って以来、取材で知り合った服役中の犯罪者たちに出所後は生活保護を受給することを勧めるようにしている。
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2024.10.02 20:00心霊【死刑囚の実像】“不器用すぎる”凶悪殺人者・高橋明彦と会う ― 取材でわかった“まさかの殺人理由”とは?(会津美里町夫婦殺害事件)のページです。死刑囚、片岡健、会津美里町夫婦殺害事件、高橋明彦などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで