ユネルタン症候群 ― 四足歩行する人々。生物の“退行進化”とは?

■ユネルタン症候群 ― 四足歩行をする家族

 今から約10年前、トルコ・アダナにあるククロヴァ医科大学のユネル・タン博士は、長年非常に興味深い家族を研究してきた。その家族は、彼らだけに共有される独自の言語を持ち、常に四足歩行の体勢で生活しているという。ユネル博士はこの家族の遺伝子を採取し、その結果、通常の人間との差異を見つけ出したという。

ユネルタン症候群 ― 四足歩行する人々。生物の退行進化とは?の画像2四足歩行をする家族「YouTube」より

 それは、「進化に逆行する指令を与える」遺伝子で、その結果、この四足歩行の家族たちは退行進化を促されてきたと結論付けているのだ。

 にわかには信じがたい説だが、博士の発表した論文には「この家族には類人猿的特長に類似したものを見出せた」とある。具体的には、「時間の概念がない」「男女問わず腕や足の筋肉が非常に強靭」「頭部姿勢の特長が類人猿のそれとほぼ合致する」などが挙げられている。ユネル博士はこの特異な遺伝子兆候を「ユネルタン症候群」と名付けている。

 まるで先祖返りをしてしまったかのようなこの家族だが、このような症状を持つ生き物は人間だけではないようだ。

■突然変異的先祖返りの事例はこの日本にも存在した!

 クジラやイルカには胸ヒレはあるが、腹ビレは存在しない。しかし、現存している彼らの祖先の化石を見ると、腹ビレを確認することは可能だ。元々水辺の生物が歩行のために使っていた足。これが徐々に水中に進出することで不要なものとなっていき、やがて足はヒレに進化。さらに水中を効率よく進むために重要な胸ヒレは発達し、逆に邪魔になった腹ヒレは使われなくなった。長い年月を経て、クジラもイルカも必要のなくなった器官を失い、より生物として完成された姿になっていったというわけだ。

 ところが2009年11月、和歌山県太地町立「くじらの博物館」は、既に退化してしまったはずの腹ビレを有したイルカ「通称はるか」を捕獲している。非常に珍しい事例だが、これこそが、先祖返りの一例だとされている。

 その理由が解き明かされることに期待したい。これが明らかになることで、もしかすれば私たちはこれから先の進化を否定することも、肯定することも選択できるようになるのかも知れない。
(文=松本ミゾレ)

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