夜明け前の軍艦島。野母半島から望む
――撮影で気を遣ったことは?
酒井 夜明け前の光や曇の日を狙って撮影をしています。軍艦島に残されている建築物には、他の場所では見られないような表情があります。このようなものは、晴れた日にはあまり見えてこないですね。かなり薄暗い環境の方が、生々しい表情が浮かび上がってきます。この写真集に収録されている写真の多くが冬に撮影したものです。コンクリートの色合いや肌合い、ぬくもりなどには、より気を配っています。
――まだまだ、軍艦島を撮り続けるのでしょうか?
もちろん撮り続けますよ。今も長崎市から許可をもらって撮影しているんですが、軍艦島の魅力は尽きることがないですね。まだ撮っておかなければいけないところが沢山あります。今回の写真集では、歴史的に見て重要な建築物にフォーカスしているのですが、炭鉱の遺構だって残されていますし、他にも魅力的な建築物があります。自分は、それらも未来に伝えていきたいと思っています。だから、まだまだ撮り終わりません。これからもずっと、ですね。
■酒井透(さかい・とおる)
写真家。秘境探検家。1985年から5年間、写真週刊誌『FOCUS』(新潮社)専属カメラマン。著書に『中国B級スポットおもしろ大全』(新潮社)がある。
『未来世紀 軍艦島』(ミリオン出版)より
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