致死率90%、史上最悪のエボラ出血熱 ― 医師たちの命がけの奮闘
■医師の犠牲者も続出
だが、残念なことに完全防護でウイルスに対峙する医療関係者達だが、感染は容赦無くそんな医師達の命をも奪っている。
シエラレオネで100人以上の患者を治療し、「国民的英雄」と称えられていたカーン医師が感染により死亡。同国唯一のエボラ出血熱の専門家であった医師の死は、取り返しのつかない損失であると保険当局は声明を出し、死を悼んだ。
リベリアでも医療当局のサミュエル・ブリスベーン医師が死亡したほか、西アフリカ3か国で医療関係者の感染は約100人にも上り、うち半数が命を落としている。
アメリカのキリスト教系国際協力団体「サマリタンズ・パース」よりリベリアに派遣され、治療に従事していたブラントリー医師(33)とライトボル医師(60)も患者から感染した。現時点での彼らの容体は重く、予断を許さない状況である。
全米でも今回の事態を非常に重く受け止めており、8月2日付けの最新ニュース(Fox News他)では、数日中に米アトランタへ移送される予定だと報じている。ブラントリー医師は自分に万が一の事があっても、治療に従事したことに後悔はないと語っていたという。
医師達の命懸けによる早期治療の効果もあり、現地では最大90%に達する致死率は現在60%に抑えられている。
■国境封鎖の事態にまで
エボラウイルスの潜伏期間は2~21日(通常は7月日程度)。症状がで始めてわずか数日で目や口腔、鼻腔、皮膚や消化器官などから出血し、死に至る。治癒しても約2カ月は人に感染させる危険があり、失明など重い後遺症が残ることがある。
また西アフリカでは、伝統的な葬儀を行う際に死者に触れて敬意を払い感謝を示す慣習があるのだが、もし死者がエボラ出血熱で死亡している場合、その際に周囲の人がエボラウイルスに感染してしまう可能性も非常に高いのである。
西アフリカでは現状、エボラウイルスの感染拡大に歯止めがかからず、8月1日付でついにギニア・リベリア・シエラレオネの3か国の国境が接する地域を封鎖し、隔離する措置がとられることとなった。
既にアメリカやヨーロッパ、香港などのアジアでも政府機関がエボラウイルスの上陸を防ぐ対策を取り始めている。
2002~2003年にかけてのSARSや2009年の豚インフルエンザなどに続き、我々は今回もまた目に見えないウイルス感染の脅威にさらされている。ウイルスに対し正しい認識と予防方法を身に付け、海外に行く予定のある方は渡航情報に注意が必要だ。
自らの危険を顧みずに現地で医療に従事する人達への敬意と、一刻も早い事態の収束を願う。
(文=Maria Rosa.S)
参考:「Daily Mail」、「CNN」ほか
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