8年間「毎日がデジャヴ」で大学に通えなくなった青年! 英医学史上最も奇怪な症例!

 執筆者のシェフィールド・ハラム大学の心理学者クリスティーン・ウェルズ博士は「通常、頻繁なデジャヴを訴える患者は、なんらかの神経学的疾患があります。例えば、認知症側頭葉てんかんなど。しかし、彼にはそれがないのです」と首をひねっている。

 A君の場合、子供の頃から不安障害と強迫神経症に罹患しており、特に病原菌に対する恐怖心が強く、頻繁な手洗いと1日2、3回のシャワーが欠かせなかったそうだ。

 しかし、2007年の大学入学直後から、それらの症状がさらに悪化。激しい不安が続いたため休学を余儀なくされた。そして、それを境にデジャヴが始まったというのだ。同年に一旦復学したものの、デジャヴはさらに頻発する。しかも、日増しに鮮烈になってきたことから、翌年には神経学の専門医を受診して、あらゆる検査、薬物療法を試みたが異常は発見できず、その後の再検査でも結果は同様だった。


■心因性の可能性も浮上

 何故このようなデジャヴが引き起こされるのか未だ解明されていないが、ウェルズ博士は「極度の不安から脳内神経細胞のギアチェンジが上手くいかなくなり、入力情報処理時に一時的なエラーが発生しているのかもしれない。それがデジャヴを生み、さらに不安になるという悪循環を創り出しているのではないか」という仮説を打ち出している。

 今後の研究で不安障害とデジャヴとの関連性を探ると伝えられているが、もしこれが科学的に証明できれば「慢性的デジャヴ」は神経学的疾患が原因だけでなく、不安感から発生する心因性の症状ということになるだろう。

 ウェルズ博士にとって想定外だったのは、A君のケースが新聞に取り上げられて以来、毎日のように同じ症状に悩まされる人々からメールが届くようになったことだ。

「かなりのレアケースだと思っていましたが、オーストラリア、アメリカから『私も経験したことがある』『まさに今私も患っているんだ』とか『家族にもいる』などの連絡が入るんです」(ウェルズ博士)

 一方、ウェルズ博士の共同研究者であるセント・アンドリュース大学のアキラ・オコナー博士には、デジャヴを神聖なものと強く信じている人々から、聖書やコーランの引用と共に調査の中止要請が届くのだという。

「その方々は『研究をやめろ! 虹(デジャヴの比喩)のでき方を解説して、その美しさを台無しにするな』と言うんですが、私に言わせれば原因を見つけ出して解説することで、デジャヴ体験がもっと美しくなりますよ」と語るオコナー博士。……この研究者魂には脱帽するとともに苦笑するばかりだ。
(文=佐藤Kay)

参考:「Telegraph」、「BBC」ほか

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