“眠り姫”という病 ― 1日22時間眠る女性、夢と現実の区別つかず

 悪い魔女に魔法をかけられ眠り続ける『眠り姫』の物語を覚えているだろうか?『眠り姫』はおとぎ話だが、その病気を発症した患者の人生はおとぎ話どころか悲劇であった――。

眠り姫という病 ― 1日22時間眠る女性、夢と現実の区別つかずの画像1熟睡するべス・ゴディアーさん 画像は「YouTube」より

 実在する『眠り姫』たちの病名は、「クライネ・レヴィン症候群(Kleine-Levin)」もしくは、「眠り姫症候群(Sleeping Beauty syndrome)」と呼ばれる。

■眠り姫症候群の主な症状

・ほとんどの患者は症状が思春期に始まる。
・多くの場合、インフルエンザや風邪などの感染症や、何らかの病気の後に発症。
・女性より男性患者が多く、3分の2は男性。
・世界中で患者は千人ほど。
・眠りの発作が始まると1日に22時間近く眠り続け、その過睡眠状態が1週間から3週間続く。
・起きている2時間も夢の中にいるような状態で、子どもっぽい反応を示し不機嫌で音や光に過敏になり、通常とは著しく異なる人格になってしまうことも多い。またその間の事は、その後目覚めた時にはまったく覚えていない。
・多くの患者が平均15歳程度で発症し、10年から15年もの間、症状が続く。
・学業や仕事に著しい支障をきたす。
・原因は先天的なもので、脳の機能の一部に問題があると推測されている。
・治療方法は薬物療法が主体だが、原因が特定されていないため、時間を要す場合がある。
・通常、成人すると自然治癒する場合が多い。


■壮絶な闘病生活「眠り姫症候群」

 この「眠り姫症候群」の患者である、べス・ゴディアーさん(20歳/英国)が、BBCの朝番組「ブレックファスト」に出演した様子を10月21日に「Daily Mail」が報告した。過去の事例とあわせて紹介しよう。

 べスさんは16歳の時にこの病気を発症した。彼女はだいたい5週間ごとに眠りの発作に襲われ、発作が始まると1日22時間眠り続けるという。その発作は短くて1週間、長くて3週間続く。

 その間、べスさんは学校に通えないだけでなく、食事も摂れなければトイレにも行けない。そして、ベスさんの母親が、医者に言われた通りに無理に起こしてトイレに行かせ、食物を食べさせる…という日々が続く。

 無理に起こされた数時間、べスさんは夢と現実の区別がつかず、年端もいかぬ子どものようになってしまうため、24時間体制の看護が必要となる。

 もちろん、べスさんの母親は仕事を辞めなくてはならなかった。ベスさんは高校を卒業して大学に進学し、一人暮らしをする計画を立てていたがそれがかなわなくなった。自分探しをする思春期も奪われた。治るにはあと10年や15年がかかる…。絶望の淵に立たされたベスさんだったが、「せめて自分が起きている間に何か建設的な事、社会に役立つ何かをしたい」と、気持ちを切り替え、テレビへの出演を決めたという。

 そして、インタビューに答えることで、この病気の認知度を上げて、治療法の確立に役立ちたいと考えているという。

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