超天才サルヴァドール・ダリの意外と知らない10の秘密・前編
3、ドルの亡者(もうじゃ) 口髭1本1万ドル/レストランでお勘定を払わずにすます方法
ダリは、その並外れた金銭欲からアート界で悪名を馳せていた。当時彼は、「アヴィダ・ダラーズ=ドルの亡者」(Avida Dollers)と冷笑されることがあった。これは、Salvador Daliの文字を組み替えた遊び(アナグラム=文字置換)で、その貪欲さの揶揄でもあった。
このイヤミな二つ名を与えたのは、シュルレアリスムの法王の異名をとる詩人アンドレ・ブルトン(Andr-Breton/1896─1966)。ブルトンはなにかとうるさく立ちまわるダリがいささか鼻についていた。そしてこの俗世に、聖なる世界への架け橋である至高点(point suprme=ポワン・シュプレム)をもたらそうとするシュルレアリスムの教義に真っ向から反抗するダリをついに持て余し、1938年に破門している。「ドルの亡者」は、その翌年に、怒り冷めやらぬブルトンが放った血の叫びだった。
ダリはその後も、ドルを稼ぐために、いろいろなことをした。たとえば、あの有名なチュッパチャプス…。1958年、バルセローナで誕生したこのキャンディーのロゴが、彼のデザインであるのを読者はご存じだろうか? それから、チョコレートにアルカセルツァー、ブランデーのCFにも上機嫌で出演している。
ここで、その3つをつづけてご覧いただこう。「ぼく、気がふれちゃったよ。だってランヴァンのチョコを食べたからネ!」のセリフはほんと、笑える。そして、二日酔いと頭痛の鎮痛錠剤「アルカセルツァー」、「闘牛ラベル」で名の知れたシェリー・ブランデーのヴェテラーノ…。この姿は、タレントそのものだ。ダリよ、あなたは目立てばなんでもいいのですか?
とは言え、そんなのはまだ序の口だ。というのも、ダリにはすこしばかり詐欺師の風があった。彼は、ある金持ちの顧客に、100万匹のスズメバチの毒を混ぜた絵具で描いたと偽って、1枚の絵を法外な値段で売り飛ばしたことがある。
そればかりではない。ジョン・レノンの妻のあのオノ・ヨーコ(Yoko Ono Lennon/1933─)にも、とんでもない詐欺を仕掛けている。ヨーコが彼の口髭を1本求めたとき、その見返りに、1万ドルを要求したのだ。ヨーコがしぶしぶお金をはらうと、ダリは髭の代わりに、乾かした草の葉っぱを送りつけた。
というのも、ダリはヨーコが彼の髭を使って呪いをかけることを心底恐れていたからだ。そんな心配をするならば、はじめから売らなければいいと思うのだが…。
ダリはまた、レストランでお勘定を払わないで済ます新手のペテンも開発している。彼は頻繁に、大勢の友人たちを高価なランチに招待した。そして支払いの段になるや、意気揚々とその全額の小切手を切ってみせるのだが、このとき、ウェイターの目の前で、さりげなく小切手の裏に落書きするのが、詐欺のミソだった。
考えてもみてほしい。あのサルヴァドール・ダリのオリジナル・スケッチが描かれた小切手を手にして、それを現金に変えようとする人間がこの世にいるだろうか?
かくして小切手は、レストランの支配人の家の応接間に、額装されてうやうやしく飾られるか、あるいは画商やコレクターにお勘定額をはるかに上回る高値で売られた。ダリ的にいえば、どうでもいいようなケチなイラスト1つで、友人たちへの大盤振る舞いに成功するという寸法だったのだ…。
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2024.10.02 20:00心霊超天才サルヴァドール・ダリの意外と知らない10の秘密・前編 のページです。画家、石川翠、サルバドール・ダリなどの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで