「日本社会を良くしたいならデッドヘッズのルールから学ぶべき」日本一のデッドヘッズが語る!


■「グレイトフル・デッド最後の旅」

「日本社会を良くしたいならデッドヘッズのルールから学ぶべき」日本一のデッドヘッズが語る!の画像4忘れもしない、シアトルのショーの写真。ひとりだけメンバーの演奏を見ず、まるで指揮者のように皆に向かって音を届けている女の子が天使のように見えた! この後、親友が会場の階段から転げ落ちてしまった…

――デッド50周年ライブについて、どう考えていますか?

SHIN 個人的には、まるでデッドヘッズたちや神様であるジェリーに「帰ってこいよ」と言われている気がしています。僕自身にも変化があって、2年間ツルツルに剃っていなかったひげが伸び始め、そこにもみあげがつながり、見た目やファッションがヒッピー時代の姿、形に戻ってきたんです。

 ジェリー以外のメンバーたちが揃うのは、これで最後になるかもしれない。しかも、Phishのトレイやジェリーの娘が「So many people will be there(たくさんのデッドヘッズが集まるだろう)」とコメントを出している。このライブに行かないわけにはいかない。

 恐らく、世界中からヒッピーが集まるため、会場の周りを取り囲むベンディング物販の人を合わせたら、1日におよそ10万人以上が集まるはずですよ。

■日本のフジロック、音楽フェスは、デッドショーを見習うべし

SHIN ちなみに、日本ではフジロックがデッドショーやウッドストックの代わりとされているけど、むしろやっていること自体は真逆ですからね。僕は1~2回目位に開催されたフジロックに参加しましたが、その時にキレてしまったことがあるんです。

 それは、突然、土砂降りの雨が降ってきた時のこと。「ビニール傘やカッパを配りましょう」、誰もが気づくようなサービスがされておらず、大勢の参加者が長時間、雨に打たれるというひどい目に遭いました。僕なんてパンツの中までビショビショになって、凍えましたからね。

 お客さんたちは、はるばる遠方から参加しているんだから、「雨が降ってきた時にフジロックのロゴやラブマークのプリントをつけたカッパを配ろう」主催者側ならそれくらい粋なことをやってみろと。

 たまたま、ムーンファミリーにフジロックの仕事をしている女性がいたので、その旨、伝えたんです。そうしたら……。

 ただでさえ、フジロックのチケットは高いというのに高級なゴアテックスを持ってこいとは何事か。防寒具もなく冷たい雨に打たれて熱を出すお客さんがいるというのに、本当にそれでいいのか? と口論になったんです。「山に登る人間なら、ゴアテックスを用意するのが当たり前。それが社長の考え方なんですよ!」

 僕は「じゃあカッパが無理なら、100均に売ってるポリ袋を1枚でも配ったらいい。そのビニールに穴を開ければ、ポンチョにすることができるから。そういう工夫をすることこそが、ヒッピーの思想なんだ」と言いました。今ではビニールが配られていると聞き、ホっと肩をなで下ろしましたけど(笑)。

 アメリカでは69年のウッドストックをはじめ、雨天時には悪いコンディションを逆利用して、雨で湿った土や泥を使って滑り台にしたりして楽しんでいる。人間ってアホじゃないんだから、幼稚園児ができる発想くらいは大人でもできるって話で、その幼稚園児が発想する遊びを大人がやってなにが悪いのか? 幼稚園や子供の時に抱いていた夢を、大人になっても追い続けているのがデッドヘッズやヒッピーの思想であって、僕がやってきたことなんです。

 そして、もう一つ。日本のフェスに対して疑問に思うことがあります。それは物販スペースを出すためにお金が必要だということ。

「日本社会を良くしたいならデッドヘッズのルールから学ぶべき」日本一のデッドヘッズが語る!の画像6ザ デッドのショーで、デッドを生で見たことないヒッピーたちが当時の写真を見て、感動しているところ

 アメリカでは地べたにタイダイを敷いて、物を売るのが当たり前なので、僕は初めてフジロックが行われるという時に同じスタイルで物を売りました。確かフィールド・オブ・へブンという場所でしたが、商品は飛ぶように売れて大盛況。ドレッドヘアーで物売りをしている、その模様が『FUJIROCKERS~THE HISTORY OF THE FUJIROCK FESTIVAL』(WHD ENTERTAINMENT)というDVDに映っていると、うちのお店の常連さんから教えられ驚きました。

 ただ、現在では日本のフェスで物を売るとなると、テナント料として大金を支払わなければならない。デッドショーでは物を売るのに、テナント料を支払うなんて考えられないことで、むしろベンディングがショーを盛り上げることに一役買っていたんですよ。フジロックなどのように、なんでもお金にしようという大人の考えは、デッドショーに比べ、あまりにも参加者側の立場を無視したビジネスライクな考え方なんじゃないかなぁ。

■日本社会に必要なものは“トレード”である

「日本社会を良くしたいならデッドヘッズのルールから学ぶべき」日本一のデッドヘッズが語る!の画像7よく泊めさせてもらっていたという、クラブデッドの社長宅にて、見せてもらった70~80年代のサイケなチケットの数々

――デッドヘッズ的な観点から、日本に必要だと思うものを教えてください。

SHIN まず、僕は日本の政治やアベノミクスの意味がさっぱり分かりません。単に大人が勝手に決めた、しきたりなのではないかと。

 そう感じるのは、やっぱり理にかなってないから。円安で外国人が日本の物を買いに来ているという事態は、日本の製品がそれだけよくできていると認められているのかもしれないけれど、このままではいけないと思う。

 たとえば、個々の持ち物で余っているものをトレードする仕組みを作るのはどうか。製品競争によって日本は物であふれ返っているわけだから、自分には必要のないものでも、別の人にとってみれば必要だということは往々にしてあるはずです。

「あなたにとって必要なもの」「私にとって必要のないもの」を交換し合うことで、成り立つ社会ができれば、それは一人ひとりが持つ得意分野のアイテムや知識をトレードすることにつながる。つまり、皆が過ごしやすい環境になるということ。とてもミラクルだし、素晴らしいことだと思います。 アメリカの場合は「フリーボックス」が街にあって、そこに不要なものを捨てて、必要だと思った人が拾って使用する。そういうものを作るのもよいかもしれません。

 もともと日本人は素晴らしい発明家なのだから、デッドのルールから学べば、すべてにおいて今より良くなるはずです。

■最後となるデッドショーについて

「日本社会を良くしたいならデッドヘッズのルールから学ぶべき」日本一のデッドヘッズが語る!の画像9ジェリー他界後、各デッドヘッズショップの前は、ヒッピー達によってまつられていた

――7月3~5日に行われるグレイトフル・デッドのライブチケットは既にソールドアウト。現在は、ネットオークションで数十万円という高値での取引がされていますが?

SHIN 僕もチケットは買えませんでした。今回のシカゴショーでも、もちろん路上で物を売るつもりですが、恐らく今回、チケットとの交換は今までで最も難しいものになるでしょうね。だから今、デッドヘッズを間違いなくうならせる、スペシャルな激ヤバサイケTシャツを作っています。これを持っていけば、まぁ、なんとかなるでしょう(笑)。

(取材・文=Yousuke Koizumi 写真=SHIN) そう彼は意気込んでいる。また、7月に行われるデッドのライブの模様を、TOCANAで報告してくれるというので、楽しみに待ちたいと思う。

前編はこちら http://tocana.jp/2015/04/post_6243.html
中編はこちら http://tocana.jp/2015/04/post_6256.html

■SHIN
90年代にアメリカでデッドヘッズとしてショーを巡り、その後、セレクトショップ「MOONSTRUCK」をオープン。多くの人々にデッドマインドを説き、日本におけるヒッピーファッション・文化を築いた。

■MOONSTRUCK
PEACE&LOVEなヒッピースタイルをテーマに、オリジナルからハンドメイドものまで、個性的でメッセージあふれるアイテムを扱うお店。レアなグレイトフル・デッドのアイテムも販売。

オフィシャルサイト http://www.moon-struck.com/

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