僕は妖怪になります、たとえ人生が狂っても ― 現実に生きる本気の妖怪・加藤志異インタビュー
■「漫画を舐めている」と編集者に言われ落ち込む日々
――妖怪、絵本作家になる前は何をしていたのですか?
加藤:話せば長くなるのですが、まず僕は早稲田大学を途中の中退期間ふくめて、11年かかって卒業しました。その時に漫画家を目指したのですが、絵が下手すぎて挫折しました。
――どれぐらい下手だったんですか?
加藤:何度もちばてつや賞に応募して、すべて参加賞のスクリーントーンしかもらえませんでした。ある出版社に漫画を持ちこんだ時にも「すべての編集者を代表して言うが、君は漫画を舐めている」「一切才能がないから、あきらめて就職した方がいい」と2時間ぐらい説教されたことがあります。友人で「惡の華」を描いている、漫画家の押見修造のアシスタントも3日ほどやったかな。自分でもわかるぐらい使えなかったです。
――絵を拝見すると、不器用というか、情熱が空回りしているような。
加藤:当時は、とにかく落ち込んで、ひきこもっていて。1日でやったことといえば、ワイドショーを見てリモコンのボタンを押しただけとか……。ものすごくダメでしたね。
――そして漫画をあきらめ、絵本を目指すんですね。
加藤:29歳の時に絵をなんとかしようと思って美術学校のセツ・モードセミナーに入学しました。そして、絵本のワークショップのあとさき塾で絵本の編集者・土井章史さんに出会うんです。僕はこの人の元で絵本を作りたくて、7年間、追っかけるようにしてつきまといました。絵本のラフ(下書き)を30回ぐらい直して、なんとか2012年に出版できることになったんです。
■エントリーシートに「妖怪になりたい」と書いた就職活動
――その粘り強さというか、一途な気持ちの延長に妖怪活動があるんですか。
加藤:妖怪活動は早稲田大学の友成真一教授の影響もあるんです。就職活動をする際、エントリーシートに「妖怪になりたい」と書いて、何社も落とされていました。そんな矢先、当時、働いていた派遣会社から「正社員にならないか」という話があったんです。そのことを僕は友成先生に相談しました。
「自分はダメ人間なのはわかっています。だから、一度社会に出て正社員になって、それから妖怪を目指した方がいいんでしょうか」
すると先生は「加藤くんの人生を、狂わせてしまうかもしれないけれど」と前置きした上で「社会に出たら君の欠点は治るかもしれないが、長所を潰すことにもなる。だから、そのまま妖怪を目指した方が、社会にとっていい」と言ってくれたんです。
僕は「じゃ、妖怪になります」と答えていました。(後編につづく)
(取材・写真=松本祐貴)
※後編はこちら(5月26日 16時から配信)http://tocana.jp/2015/05/post_6414.html
プロフィール
加藤志異(かとう しい)
1975年岐阜県生まれ。絵本作家。作に『とりかえちゃん』(絵:本秀康/文溪堂)、『クッツケロ』(絵:本秀康/学研おはなしプーカ)、『ぐるぐるぐるぽん』(絵:竹内通雅/文溪堂)『せかいいちたかい すべりだい』(絵/山崎克己/大日本図書)などがある。
妖怪になるための演説活動のほか、絵本の読み聞かせやワークショップも展開する。
映画「加藤くんからのメッセージ」公式HP:http://www.yokai-kato.com/
松本祐貴(まつもと ゆうき)
1977年大阪府生まれ。フリー編集者&ライター。雑誌記者、出版社勤務を経て、雑誌、ムックなどに寄稿する。テーマは旅、サブカル、趣味系が多い。2015年5月末まで写真展も開催中。
ブログ〜世界一周〜旅の柄:http://tabinogara.blogspot.jp/
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2024.10.02 20:00心霊僕は妖怪になります、たとえ人生が狂っても ― 現実に生きる本気の妖怪・加藤志異インタビューのページです。妖怪、加藤志異、松本祐貴などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで