自分で指を切り落とす…!! 実像を知る男が語る「見沢知廉、革命後の生き様」

■「スパイ粛清事件」

 82年9月12日、他のメンバーらと一緒に、見沢はひとりの人間を殺めてしまう。これを見沢は終生「スパイ粛清事件」と言い、周囲の人間には「殺人事件」と呼ぶことを許さなかった。国家権力・公安のスパイを粛清した政治事件だと言い張ったのだ。

 2012年に公開された大浦信行監督による映画『天皇ごっこ 見沢知廉・たった一人の革命』で、その実相は明らかになっている。

 右翼のシンクタンクを作ろうとするヘゲモニー争いで、相手を査問しているうちに、脅しに使おうと用意していたバールで殴打して重傷を負わせてしまったのだ。そのまま帰せば彼の仲間から報復を受けるので、殺すことになったという。

 その場にいたメンバーのふたりが9月16日に自首。警察の捜査によって、見沢は全国指名手配され、9月23日出頭して逮捕される。イギリス大使館への火焔瓶投擲を含めて、懲役12年の判決を受け、川越少年刑務所、八王子医療刑務所、千葉刑務所で服役。その間、獄中で小説を書いて文学賞に応募し続けた。これは母親の協力があってできたことだ。二重労働に当たるとして、服役中の小説の執筆は禁止されていた。手紙に少しずつ、それと分からないように小説の一部を忍ばせて送り、受け取った母親が清書して応募し続けたのだ。


■小説家となった見沢知廉の生活

 成田闘争を続けていた私は、千葉刑務所に拘置され、彼のすぐ近くにいたこともあったのだが、実際に再会したのは彼が出所してからだ。私もその頃には闘争を離れ、ライターになっていた。

 彼の部屋を訪ねていくと、紙くず、コンビニ弁当の空箱、食べかけの煎餅などのゴミが、床から約50センチも積もっていた。部屋ごとゴミ箱になっているありさまであった。彼はその上で寝起きし、執筆もしていた。

 いつも、金がない、と嘆いていた。『囚人狂時代』は8万部以上も売れているのに、なぜ金がないのだ。そう聞くと見沢はこう答えた。

「12年間、貨幣を見ていなかったので、あると使っちゃうんだ」

 フィギュアや切手を集める趣味もあり、ファッションにもこだわっていたが、いったい何にそんなにも金を使っていたのか、いまだに不明だ。

『調律の帝国』を発表したのが、1997年。その後、体の不調が目立つようになる。98年11月3日、立教大学で講演中に脳梗塞で倒れ、その後の半年で7、8回も倒れている。タクシーを降りただけで骨折したこともあった。

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