自分で指を切り落とす…!! 実像を知る男が語る「見沢知廉、革命後の生き様」

自分で指を切り落とす…!! 実像を知る男が語る「見沢知廉、革命後の生き様」の画像1※イメージ画像:『天皇ごっこ 見沢知廉・たった一人の革命』(TOブックス)

 見沢知廉(みさわ・ちれん)が死してから、10年になろうとしている。

 有名な作家ではないが、今年も8月28日から30日まで、見沢を題材にした演劇『天皇ごっこ ~母と息子の囚人狂時代~』がAPOCシアターで上演されるなど、今でもマニアックなファンに愛され続けている。

 千葉刑務所に服役中の1994年10月、『天皇ごっこ』(第三書館)で、第25回新日本文学賞を受賞したのが、見沢の作家デビューだ。同年12月に満期出所すると、獄中で文学賞を獲った作家として、一躍注目を浴びた。出獄後は、『囚人狂時代』『母と息子の囚人狂時代』(ともに新潮社)などを発表。結果は落選だったが、『調律の帝国』(同)で三島由紀夫賞候補にまでなっている。


■筆者と見沢知廉の出会い~成田闘争~

 見沢と私が初めて会ったのは、1978年の5月。見沢が18歳、私は19歳。成田国際空港に反対する闘争の現場だった。その頃、日本に30ほどもあった共産主義を信奉する組織のひとつ「共産主義者同盟(戦旗派)」というセクトに、私たちは属していた。火焔瓶などを使った武力闘争で、世の中が変えられると大まじめに考えていたのだ。

 政府はその年の3月30日に成田空港を開港する予定だった。3月26日、ヘルメットを被り、火焔瓶、鉄パイプ、角材などを持った、第4インター、プロ青同、戦旗派などの、数千のセクト戦士たちが空港に突入。その混乱の中で空港地下にいた10数人のセクト戦士が管制塔にまで登り、ハンマーで管制機器を破壊し、開港は延期された。

 出直し開港が5月20日とされ、再度、阻止闘争が組まれる。その中で、見沢と私は、闘争での怪我人の救護を行う野戦病院に赴いた。結局、3月ほどの闘争にはならず、空港への突入も果たせなかった。野戦病院が闘争現場から遠かったこともあり、怪我人はただひとりもやってこなかった。


■活動家として目覚めた時期

 見沢は、早稲田中学から早稲田高校へ進む、一般的にはエリートコースと見られる道を歩んでいた。だが、中学生の頃には右翼団体に入り、高校では暴走族に入りヤンキーとなっている。

 高校2年の時の学期末試験。教壇に上がって、見沢は答案用紙を破り捨てる。

「点数がすべてを決めるこんな制度に従っていられるか!」

 そう叫ぶと、屋上に上がって「昭和維新の歌」をひとりで歌っていた。彼を追って上がってきたのが、すでに戦旗派で活動していた同級生だった。

「決起したな。これでお前も左翼だ。こわっぱ教師なんか相手にするんじゃなく、国家権力と闘おう」

 彼にそう言われて、見沢は戦旗派に加わったのだ。

 しかし、成田空港の開港阻止闘争を経て、79年に見沢は戦旗派を離れ、81年に新右翼「一水会」に入る。「左翼では民衆の心はつかめない。だから右翼に行く」というのが理由だった。そして一水会傘下の「統一戦線義勇軍」の議長にまでなった。82年にイギリスとアルゼンチンの間にマルビナス紛争が勃発すると、アルゼンチン支持の立場からイギリス大使館に火焔瓶を投げつけるなど、いまだ武力闘争を信じていた。

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