自分の名を呼ぶ声から逃げ続けた20時間 —— 遭難した女性2人が救助隊を「人を死へ誘う霊」だと信じ込んだ山中の顛末

山の中で、自分の名前を呼ぶ声が聞こえたら、あなたは返事をするだろうか。まして道に迷い、飲まず食わずで一昼夜をさまよっていたなら、迷わず叫び返すはずだ——普通なら。
ところが中国で先ごろ起きた遭難騒動では、助けを求めていたはずの女性2人が、自分たちを呼ぶ声から必死に逃げ隠れしていたという。
彼女たちが声の正体だと信じていたもの。それは、人を死へ誘い込むために名を呼ぶ「山の霊」だった。
薬草を採りに入った山で、2人は消えた
事の発端は、北京在住の女性2人が薬草を探すために森林に覆われた山あいへ分け入ったことだった。氏名は公表されていない。
だが2人は、日が暮れても戻らなかった。帰りを待つ人々が異変に気づいたのは、出発から16時間が経過してからのことだ。
通報を受けた当局はただちに捜索を開始した。だが、これが難航する。救助隊は実に20時間ぶっ通しで山中を捜し回ることになった。
ようやく2人が発見されたとき、彼女たちは食料も水も口にしていない状態だった。山に入ってからすでに丸一日半以上が経過していた計算になる。
そして疲弊しきった2人の口から語られたのは、捜索がここまで長引いた理由としてはあまりに予想外の説明だった。
「呼ばれても答えるな」——2人を沈黙させた古い言い伝え
保護されて体力を回復させながら、2人はこう明かしたという。捜索が続いていた長い時間のあいだ、自分たちの名前を呼ぶ人の声を、一度ならず何度も聞いていた、と。
つまり救助隊の声は、遭難した2人の耳にちゃんと届いていたのだ。それでも彼女たちは声を出さず、沈黙を守り続けた。
理由は、古くから語り継がれてきた民間信仰にあった。山野で自分を呼ぶ声は、人を破滅へと引きずり込もうとする霊のものかもしれない——そう信じられてきたのだという。
だから2人は、声が聞こえるたびに息を潜めた。それどころか、声が近づいてくると、その場から走って逃げ出しさえしていたと語っている。
救助を求めて山をさまよう遭難者と、その名を呼びながら山を歩く捜索隊。両者は同じ森の中にいながら、一方が近づくたびに、もう一方が遠ざかっていた。20時間という捜索時間の長さは、この悲劇的なすれ違いの結果だったことになる。
「山で呼ばれても返事をするな」は日本にもある禁忌
奇妙な話に聞こえるかもしれないが、これを中国特有の迷信と片づけるのは早計だろう。山中の呼び声を恐れる感覚は、東アジアの山村文化に広く根を張っている。
日本でも、山で名前を呼ばれても返事をしてはならない、応えれば連れて行かれる、といった戒めが各地の伝承に残されている。正体不明の呼び声は天狗の仕業とされ、山彦もまた、もとは山の精霊が返す声と考えられていた。
中国には、山道で同じ場所をぐるぐると歩かされ続ける「鬼打墙(きだしょう)」の言い伝えもある。山という空間は、洋の東西を問わず、人の認識をやすやすと狂わせる場所として恐れられてきた。

こうした禁忌は、もともと山で命を落とさないための知恵として語り継がれてきたはずのものだ。
だが今回、その知恵は完全に裏目に出た。彼女たちを守るはずの言い伝えが、彼女たちを救おうとする手から遠ざけたのである。
幸いにも2人と捜索隊は最終的に鉢合わせし、追ってきていたのが霊ではなく生身の人間であることを、彼女たちはようやく理解した。笑い話として片づけてしまえる結末ではある。
しかし、もし最後まですれ違い続けていたら——彼女たちは「声」から逃げ続けたまま、山の奥深くへ消えていたかもしれない。名を呼ぶ声を恐れよという教えが生まれた背景には、そうやって本当に戻らなかった誰かの記憶があるのではないか。そう考えたとき、この一件はにわかに笑えなくなる。
参考:Coast to Coast AM、ほか
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2024.10.02 20:00心霊自分の名を呼ぶ声から逃げ続けた20時間 —— 遭難した女性2人が救助隊を「人を死へ誘う霊」だと信じ込んだ山中の顛末のページです。中国、遭難、民間伝承などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで
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