陰謀論を信じる人の共通点は「人生の逆境体験」だった?不公平な社会への怒りが生み出す“裏の組織”

「地球は本当に丸いのか」「アポロは本当に月へ行ったのか」——こうした陰謀論を真剣に信じる人と、鼻で笑う人。両者を分けているのは、知識量でも学歴でもないかもしれない。
イギリスの研究チームが1284人を対象に3つの実験を行い、人生における逆境体験と陰謀論への傾倒の関係を検証した。
そこから浮かび上がったのは、両者をつなぐ「蝶番」となる、ある感覚の存在だった。
逆境そのものではなく、逆境が変えた「世界の見え方」
研究を行ったのは、ノッティンガム大学とカンブリア大学のチームだ。
最初の実験では、参加者が人生で経験した逆境を尋ねた。重い病気やケガ、身近な人との死別、経済的な困窮、人間関係の破綻、そして暴力被害といった項目だ。同時に、陰謀論的な思考をどの程度持っているかも測定している。
集計の結果、逆境を多く経験してきた人ほど、この世界を不公正なものとして捉える傾向が強く、その不公正感の強さが陰謀論を信じる度合いと結びついていたという。
ただし研究チームは、単純な「苦労した人=陰謀論者」という図式には釘を刺している。
主著者であるダニエル・ジョリー博士は、人生で大きな困難に直面する人は決して珍しくないが、その大半は陰謀論の信奉者にはならないと指摘。重要なのは苦難そのものではなく、その経験によって世界の見え方がどう書き換えられたかであるとの見解を示している。
暴力被害者の反応、そして「社会は不公平になりつつある」と思わされた人々
2つ目の実験では、暴力犯罪の被害を経験した人と、経験していない人を比較している。
ここでも同じ構図だ。暴力被害を経験した人ほど社会への不公正感が強く、陰謀論を受け入れる度合いも強い傾向を示したという。
3つ目の実験で、研究チームは「不公平さの認識」そのものを直接揺さぶりにいった。参加者に、社会がより不公平な方向へ向かいつつあると感じさせる手続きをとったのだ。
結果、その後の参加者は陰謀論的な信念をより強く示したと報告されている。
これは、逆境と陰謀論の関係が単なる偶然の相関ではなく、「不公正だ」という感覚を動かせば陰謀論への傾きも動く可能性を示唆する結果だ。

陰謀論は「なぜ自分が」への答えを用意してくれる
なぜ不公正感が陰謀論を呼び寄せるのか。ジョリー博士は、世界が根本的に不公平だと感じられるようになったとき、陰謀論はその不公正の出どころを説明してくれるがゆえに魅力を増す、という趣旨の見解を示している。
理不尽な病、突然の死別、理由なき暴力。当事者にとって最も苦しいのは、痛みそのものよりも「なぜ自分だったのか」に答えがないことだろう。
そこへ「裏で誰かが糸を引いている」という物語が差し出されれば、少なくとも苦しみに輪郭が与えられる。溺れる者は藁をも掴む、という言葉が示す通りだ。
共著者のローラ・ブラッキー博士は、臨床心理学の分野では急性のトラウマが個人の世界観に深刻な影響を及ぼすことが長く記録されてきたと述べる。社会への不公平感もそうした帰結の一つであり、それが陰謀論の受け入れやすさや、社会制度への信頼に影響しうるとの見方を示している。
一方で研究チームは、今回の結果が因果関係を立証したものではないとも明言している。逆境が社会の見方を形づくる経路の一つを指し示したにすぎない、というわけだ。
陰謀論を信じる人を「非合理な変わり者」と切り捨てるのは簡単だ。だが今回の研究が示唆するのは、その信念の背後に、病や死別や暴力といった、誰の身にも起こりうる出来事が横たわっている可能性である。
陰謀論が広がる社会とは、それだけ多くの人が「この世界は不公平だ」と感じている社会なのかもしれない——。ではその不公平感を生み出しているのは、いったい誰なのか。その答えを陰謀に求めるかどうかは、また別の話である。
参考:Daily Mail、ほか
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