「カナダ軍がアライグマを兵器化している」という嘘を信じる人々…… 心理学者が仕掛けた罠で判明した“エセ陰謀論者”の正体

「地球は平らである」「鳥は実在せず、すべて政府の監視ドローンだ」——ネット上には、常識では考えられないような陰謀論が溢れかえっている。
近年では、こうした荒唐無稽な理論が単なるネットの地下掲示板の話題にとどまらず、政治や公衆衛生にまで影響を与え、社会問題化しているのはご存知の通りだ。
しかし、ここで一つの大きな疑問が浮かび上がる。彼らは本当に、心の底からその陰謀論を信じているのだろうか?
最新の心理学研究が導き出した答えは、非常に現代的で、そして少し呆れるものだった。実は、陰謀論を声高に主張する人々の多くは、それを1ミリも信じていない可能性があるというのだ。彼らはただ、真面目な顔をして「ふざけている(荒らしている)」だけかもしれないのである。
「カナダ軍が遺伝子組み換えアライグマの秘密部隊を作っている」
事の発端は、オーストラリア(科学メディア「IFLScience」の報道ではニュージーランドとも)で行われた、1000人以上の市民を対象とした陰謀論に関する調査だった。
研究者たちは、新型コロナウイルスのパンデミック以降、なぜ人々がこれほど簡単に陰謀論に染まってしまうのかを真面目に解明しようとしていた。そこで彼らは、アンケートの中に誰も聞いたことがない「完全なでっち上げの陰謀論」を一つ忍ばせてみたのだ。
それが、「カナダ軍が他国を侵略するために、遺伝子操作された『武装アライグマ』の秘密部隊を開発している」というものである。
映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のロケット・ラクーンならいざ知らず、現実世界でカナダ軍がアライグマを兵器化しているなど、どう考えても頭がおかしい。100%の嘘であり、完全なナンセンスだ。
ところが、アンケートの結果が返ってくると研究者たちは頭を抱えることになった。なんと、回答者のうち7.2%が、この「武装アライグマ陰謀論」を「真実だ(支持する)」と答えたのである。
愉快犯が歪める科学研究
さらに調査を進めると、最終的なサンプルのうち8.3%が「アンケートのどこかで不真面目に(ふざけて)回答した」と認めた。武装アライグマを支持した層と合わせると、全体の13.3%の回答者が、最初から研究者をからかう目的で「不誠実な回答」をしていたことが判明したのだ。
つまり、彼らは「カナダ軍のアライグマ部隊」を信じているわけではない。ただ単に、「ここで『信じてる』って答えたら、真面目な研究者がどんな顔をするだろう」という「愉快犯」の心理でチェックマークを入れているだけなのだ。
この結果は、過去に行われた「陰謀論に関する真面目な心理学研究」の根底を揺るがすものだ。これまで「人口の〇%が地球平面説を信じている!」とセンセーショナルに報じられてきたデータの中には、ただの「冷やかし」が大量に混ざっていた可能性が高いのである。
「バカのふり」を楽しむ現代の病理
彼らがなぜそんなことをするのかと言えば、「どうでもいいから」、そして「真面目な研究を台無しにして笑いたいから」という、ネット特有の虚無主義(ニヒリズム)に他ならない。
もちろん、本当に心の底から荒唐無稽な陰謀論を信じてしまっている人も一定数存在するだろう。しかし、注目を浴びるため、あるいは単なる娯楽として「陰謀論者を演じている」層の存在は、私たちが想像する以上に大きいようだ。
ネット上で「アポロは月に行っていない!」と熱弁しているアカウントの向こう側には、真実の探求者ではなく、スマホを見ながらニヤニヤ笑っているだけの愉快犯がいるのかもしれない。
彼らにとって陰謀論は、真実を暴く正義の戦いなどではなく、退屈な日常をかき回すための「ちょっとした遊び」に過ぎないのだ。誰かの悪ふざけに現実の社会が右往左往させられるのは、そろそろ笑えない冗談になってきた。次に突拍子もない陰謀論を見かけたときは、腹を立てるのではなく「これもカナダの武装アライグマの仕業だな」と笑って受け流すくらいが、今のネット社会を生き抜く最適解なのかもしれない。
参考:Unexplained Mysteries、VICE、ほか
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