英軍元司令官がコロナ初期の中国と重なると警鐘!シベリアのペスト疑惑で中央アジア諸国が国境検疫を強化、WHOは低リスクと評価

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 シベリアの対ペスト研究所で28歳の検査助手が急死し、肺ペストの疑いが取り沙汰されている問題。ロシア当局が「原因不明の肺炎」として否定する中、欧米の専門家からは6年前のあの光景を思い出させるという声が上がり始めた。

 武漢で始まった新型コロナウイルスの流行初期と、何が似ていて、何が違うのか。周辺国やWHOの最新の動きとあわせて整理したい。

武漢から400万人が出国、専門家が重ねるコロナ初期の記憶

 最も強い警告を発したのは、英陸軍の化学・生物・放射性物質・核(CBRN)連隊で司令官を務めたハミッシュ・ド・ブレトン=ゴードン氏だ。同氏はテレグラフ紙の取材に対し、当局が情報を出し渋り、SNSの投稿が次々と削除されている現状は、COVID-19発生当初の中国の振る舞いと重なり危険だとの見方を示した。

 同氏は、武漢からは流行初期に約400万人が出国し、それが世界的な感染拡大につながったと指摘。ペストを扱う研究員であれば、ワクチン接種などの医学的な備えがあって当然だとも述べている。

 レディング大学で生物医学を研究するサイモン・クラーク氏も、ロシア側は面目を保つために情報を伏せているように見え、先進国では考えにくい不手際だとの見解を示した。キングス・カレッジ・ロンドンのバイオセキュリティ専門家フィリッパ・レンツォス氏は、当局がペストによる死と研究所での事故の両方を否定している点に注目している。

世界へ広がるのか、警告と冷静論

 米国防総省の元高官で、旧ソ連の研究施設を訪れた経験を持つアンドリュー・ウェバー博士は、肺ペストは飛沫で人から人へうつるため、相当な速さで広がり得ると警告した。ロンドンの公衆衛生当局なら、同地域からの便や乗客を空港で監視・検査すべきだという立場だ。

 一方で、冷静な見方も少なくない。独立系メディアMeduzaの解説によれば、ペストには抗生物質が有効で、発症から2日以内に治療を始めることが重要とされる。治療しても腺ペストで約14%、肺ペストではその約2倍が死亡するとされ、無治療の肺ペストはほぼ致死的だ。それでもペスト菌はコロナほど人から人へ広がりやすくはなく、対応手順も確立しているため、新たなパンデミックが差し迫っているわけではないという。

 実際、特定された接触者197人からペスト陽性者は1人も出ておらず、10月6日時点で二次感染の報告もない。病院封鎖の報道についても、確認されたのはシェレホフの地区病院のみで、イルクーツク市内の病院は通常稼働しているとの現地情報がある。

国境で体温測定、WHOと米国も注視

 それでも周辺国は動いた。カザフスタン、キルギス、タジキスタンの保健省が10月5日、国境での体温測定や健康チェックの強化を相次いで発表。タジキスタンは国境職員に防護服を支給し、ウズベキスタンもロシアの公式確認はないと断りつつ備えを強めた。モンゴルも国境地域で警戒を高めたと報じられている。

 WHOは10月6日、ジュネーブでの会見で初期リスク評価を公表した。イルクーツクは「中程度〜低」、ロシア全体は「低」、欧州地域は「非常に低い」とし、新情報があれば見直すとしている。死因は公式には未確定で、検査が続いているという。

 在ロシア米大使館も同日、報道を把握し注視していると声明を出した。米ジョンズ・ホプキンス大のアメシュ・アダルジャ博士は、抗生物質で治せる病気にしては封じ込めが過剰でちぐはぐに見え、別の病原体が関わっている可能性も疑問として浮かぶとの趣旨を述べている。

旧ソ連の「ペスト研究」が疑念を呼ぶ

 ここまで疑いの目が向けられる背景には、旧ソ連の歴史がある。ウェバー博士によれば、旧ソ連はげっ歯類やノミからペスト菌を集め、抗生物質への耐性や毒性を高める研究を行っていたという。一方で、ロシアは厳格な隔離によって流行を抑え込んできた実績もあると同氏は付け加えている。

 現時点で、二次感染の兆候は見つかっていない。最も合理的なのは、当局の言う通り一人の悲劇で終わるというシナリオだろう。それでも、ペストの研究者がペストを疑われる死を遂げ、情報は消され、隣国は国境で検温を始めた。この奇妙な符合が偶然なのかどうか、世界は今もイルクーツクから目を離せずにいる。

参考:LADbible、UNILAD、UN Geneva、The Times of Central Asia、Newsweek、Meduza

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