幻覚剤体験に最大約300万円! エリートCEOたちがメキシコで挑む「地獄の旅」イボガインの危うい実態

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 仕事に追われ、心身をすり減らした成功者たちが、いま大金を携えてメキシコを目指している。目的は、強力な幻覚作用を持つ物質「イボガイン」の体験だ。

 Fox Newsがニューヨーク・ポスト紙の報道を引いて伝えたところによれば、経営者や起業家らが「心のリセット」を求め、最大2万ドル(約300万円)を支払っているという。だが、その体験は決して優雅なリトリートではない。命に関わるリスクも指摘される、文字どおりの「地獄の旅」なのだ。

ヨガとマッサージ付きの「幻覚剤リゾート」

 イボガインは米国では医療目的での使用が認められていない。そのため、一部のアメリカ人は国境を越え、メキシコの施設へ向かっている。

 プラヤ・デル・カルメンの施設は、空港送迎や宿泊などの旅行手配まで請け負うとしている。カンクンの施設では、医療監督下でのケアに加え、宿泊、ヨガ、瞑想、マッサージ、体験を振り返るセッションまでがセットになった数日間のプログラムを提供している。まるで高級スパのようだ。

 同紙によれば、カンクンの施設の滞在費は1万2500ドルから2万ドル(約188万〜300万円)。心身の最適化を目的とする顧客は、およそ10日間滞在するのが一般的だという。

 もともと依存症からの回復を求めて渡航する人が多かったが、近年は施設側がイボガインを自己成長やパフォーマンス向上、燃え尽き症候群からの立ち直りの手段として売り出しているとされる。ニューヨーク・タイムズ紙は、メキシコ国内でイボガインを提供する診療所やウェルネス施設が少なくとも40カ所にのぼると報じた。10年前にはほぼ皆無だったというから、急拡大ぶりがうかがえる。

記憶が噴き出す「フラッド」の衝撃

 実際に体験した人物の証言もある。健康関連企業の共同創業者マイク・ストラットン氏(34歳)は、過酷な仕事のせいで健康も私生活も損なわれ、立て直しのきっかけを求めてイボガインにたどり着いたと同紙に語った。

 彼が受けたのは「フラッド」と呼ばれる高用量の施術だ。その最中には過去の記憶や思考が次々と湧き上がり、強烈な体験となった。ストラットン氏はそれを、地獄のような道のりだったと振り返っている。

 ニューヨーク・タイムズ紙によれば、作用は24時間以上続くこともあり、患者は目覚めたまま夢の中にいるような状態に置かれるという。

心臓への危険と専門家の警鐘

 この物質には深刻な影の側面がある。同紙は、イボガインが心臓の働きに干渉し、致命的な心臓合併症を引き起こすおそれがあると伝えている。医療的な監視が欠かせない理由だ。

 ところが施設の質は千差万別で、資格を持つ医療者がそろう高級施設から、簡素な環境で営む非公式な施術者までさまざまだという。料金も渡航費を除いて約5000ドルから2万ドル近く(約75万〜300万円)と幅がある。事前の検査や緊急時の備え、事後のケアの水準も施設によって大きく異なるとされる。

 イボガインが改めて注目を集めたきっかけは、シンディ・クロフォードの息子プレスリー・ガーバー氏が27歳で亡くなったことだった。依存症に苦しんでいた同氏は、イボガインの高用量施術を受けるためメキシコに渡航していたと報じられている。生前には、脳の回路を組み替えたいという思いからイボガインに頼ったことを公に語っていた。

 依存症治療の専門家として知られるドリュー・ピンスキー医師は、イボガインなどの代替的な幻覚剤療法を依存症の特効薬とみなすことに警鐘を鳴らす。数十年にわたりこうした物質を使った患者を診てきたが、そこに魔法のようなものは何もないとの見解だ。

 古来、人類はシャーマンの儀式を通じて意識の向こう側をのぞこうとしてきた。かつて儀式の場で営まれてきたその体験が、いまや数百万円の値札が付いた商品として成功者たちに売られている。彼らが本当に買っているのは「再起」なのか、それとも、忙しすぎる現代人が失った「立ち止まる時間」なのか。

参考:Fox News、ほか

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