自分で指を切り落とす…!! 実像を知る男が語る「見沢知廉、革命後の生き様」

■荒れ続ける私生活、そして…

 この頃、プラスチックケースに入った白い錠剤を大量に口に放り込み、ガリガリと噛んで飲み下すのを、会う度に目にすることになる。抗うつ剤だった。

「ここは、ちょっと言えばすぐに薬をくれるんだよ」

 そう言って、行きつけのクリニックに連れて行ってくれたこともある。

 抗うつ剤を大量に飲んで何日間も眠らずにハイになり、その後は、何日も眠りこけるというパターンが続く。原稿が書けなくなり、イベントの約束なども守れなくなる。仕事は激減した。

 以前から見沢は悪筆だったが、抗うつ剤への依存がひどくなると、話していることもわからなくなってきた。電話で話していてもまったく理解できず、彼が納得して受話器を置くまで待つしかない。どうせ来ないだろうと思いつつ、イベントのメンバーに入れておいたら、「本当に来たの!?」と驚かれながら登壇したこともある。この時も、何を話しているのかまるでわからなかった。

 自然と距離を置くようになってしまったが、2004年、見沢から残暑見舞いがきた。指を切ってICU(集中治療室)入りしたと書いてあった。どういう意味かと思ったが、読める字ではあった。横浜に移住したというので行ってみると、両方の小指がない。

「まあ、事故っていうことで」

 本人は言葉を濁したが、自分で切り落としたのだ。多量に出血したが、偶然に訪ねてきた母親がそれを見付け、すんでのところで助かった。

 話している内容もわかったし、見たところ、普通だった。入院した病院では抗うつ剤をくれなかったので、薬が抜けたのだと、彼は語った。

 2005年は次第に執筆も再開し、体調も回復へ向かっていた。亡くなったのは、月刊『新潮』に掲載の決まっていた『愛情省』の原稿に手を入れていた頃だった。

 9月7日、住んでいたマンション8階の手すりを乗り越えて、見沢は宙に飛んだ。自殺としか見ようがないが、本当に死のうとしたのか、と今でも疑問に思う。薬物依存との闘いの中で、彼の精神に事故が起きてしまったのではないか。10年経っても、無念の思いは去ってくれない。
(文=深笛義也)


■深笛義也(ふかぶえ・よしなり)
1959年東京生まれ。横浜市内で育つ。18歳から29歳まで革命運動に明け暮れ、30代でライターになる。書籍には『エロか?革命か?それが問題だ!』『女性死刑囚』『労働貴族』(すべて鹿砦社)がある。ほか、著書はコチラ

※日本怪事件シリーズのまとめはコチラ

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1959年東京生まれ。横浜市内で育つ。18歳から29歳まで革命運動に明け暮れ、30代でライターになる。書籍には『エロか?革命か?それが問題だ!』『女性死刑囚』『労働貴族』(すべて鹿砦社)、『罠: 埼玉愛犬家殺人事件は日本犯罪史上最大級の大量殺人だった』(サイゾー)がある。ほか、著書はコチラ
Twitter:@giyagiyagiya

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