2400隻の船でエルニーニョを抑制する「海洋雲白色化」計画、海面温度を1.88度下げる効果と制御不能な副作用の正体

地球の気候そのものを人間の手で調整する——SF映画のような発想が、いま気候科学の論文として真面目に検算されている。数千隻の船が太平洋に海水の霧を噴き上げ、雲を白く輝かせて海面を冷やすというのだ。
狙いは、世界中に干ばつと豪雨をばらまく「エルニーニョ」の勢いを削ぐこと。ところが最新のシミュレーションは、その介入が正反対の異常気象を呼び込む可能性を突きつけた。
2400隻の船で雲を「白く塗る」——海面を1.88度冷やす計算
計画の名は「海洋雲白色化(マリン・クラウド・ブライトニング)」。船から微細な海塩の粒子を低い雲に吹き上げ、雲粒を細かくして反射率を高める技術だ。白くなった雲がより多くの太陽光を宇宙へ跳ね返し、その下の海面温度を下げる。
学術誌「Science Advances」に2026年7月に掲載された研究は、この手法をエルニーニョ抑制に転用した場合の効果を、気候モデルCESM2で検証した。想定された規模は、南東太平洋の約7%にあたる海域に、およそ2400隻——世界の商船隊の約2%に相当する船団を張り付けるというものだ。
計算結果は、確かに効いていた。最も強い散布シナリオでは、太平洋中央部の海面水温が1.88度低下。1平方メートルあたり27.1ワットの冷却が生じ、1800万平方キロメートル(日本の国土の約48倍)にわたって地表温度が1.67度下がったという。
冷やした海が呼び込む「早すぎるラニーニャ」
問題はその後だ。モデル上で試されたすべての散布戦略が、翌年の秋にかけて太平洋をより冷たい側へと押しやった。エルニーニョ監視の基準となる「ニーニョ3.4」海域の水温は、何もしない場合よりも早く、より深く下がっていったのである。
散布期間が長いシナリオほどその傾向は強く、ラニーニャの判定ラインである平年比マイナス0.5度を、自然の周期より何季節も前倒しで割り込んだ。エルニーニョを叩いた拳が、そのまま強いラニーニャを生み出す構図だ。
しかも影響は、世界に均等には配られなかった。1997〜98年のエルニーニョを想定したケースでは、寒冷・乾燥による悪影響が約41%増加。もともとエルニーニョの影響圏外だったはずのヨーロッパやアジアで顕著な昇温が現れ、西アフリカでは乾燥が進んだ。
一方、2015〜16年のケースでは高温・多雨の被害が約70%改善している。天秤がどちらに傾くかは、場所と年によって正反対になるということだ。
誰が散布ボタンを握るのか——存在しない国際ルール
この研究が突きつける最大の論点は、技術ではなく統治の問題である。海に塩を撒く行為を管理・許認可する国際機関は、現時点でどこにも存在しない。
つまり、外洋に出られる船と資金さえあれば、一国が——あるいは一企業が——単独で地球の気候スイッチに手をかけられる。自国の干ばつを止めるための散布が、地球の裏側の収穫を奪う。その責任を問う枠組みは用意されていない。
研究チーム自身も、今回の結果が単一の気候モデルによるものであることを認め、複数モデルによる検証を経ずに実行を検討すべきではないとの立場を示している。
エルニーニョを止める技術は、そのままラニーニャを起こす技術でもある。もし誰かが「善意で」その引き金を引いたとき、私たちは目の前の異常気象が人為なのか自然の揺らぎなのかを、いったいどうやって見分ければいいのだろうか。
参考:Above the Norm News、Science Advances、ほか
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2024.10.02 20:00心霊2400隻の船でエルニーニョを抑制する「海洋雲白色化」計画、海面温度を1.88度下げる効果と制御不能な副作用の正体のページです。エルニーニョ現象、ラニーニャ現象などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで


