P194-195 ベシボカ川/マダガスカル
【森林伐採が産み出した幻想的で悲劇的な光景】
一見して、この世のものとは思えないこの光景は「世界で最も変化が激しい」と言われるマダガスカル島のベシボカ川。全長525km、この衛星画像はマダガスカルの中央部から北西ボンベトカ湾へと注ぐデルタである。川を染める赤色は、上流の土壌から流れ出た赤土による。もともと河口部は豊富なマングローブに囲まれており、それら植物が土壌を維持していたが、過去百年、森林伐採との農地開発が行われ、赤土が川へと流入を始めた。海へと流れ出る赤土の量はおよそ年間250トンとも言われ、これほどの量は世界にも類例がない。宇宙からこの様子を見た宇宙飛行士は「川が海に向かって大量の血を流しているようだ」と表現したという。
――本書の構想はいつごろから、どのようなきっかけでつくることになったのでしょうか?
佐藤健寿氏(以下、佐藤氏):今年の初めに、朝日新聞出版の方から「人工衛星の写真を使った本を作ってみませんか?」と話をいただいたのがはじまりです。『Google Map』などに衛星画像を提供している、アメリカのデジタルグローブ社という世界最大の民間人工衛星企業があるんですが、そこが特別に使用許可を出してくれまして、僕の方で撮影場所の選定や画像加工など一切の作業を行いました。