【死刑囚の実像】村八分の妄想に陥った凶悪犯 ― 山口5人連続殺人・保見光成の“本当の孤独”
■症状は悪化中
「保見さんは孤独感を募らせ、妄想性障害に陥りました。犯行時は集落でいやがらせを受けているような妄想を抱いていて、心身耗弱か心神喪失の状態でした」
弁護人たちは保見の主張に合わせ、保見は殺害や放火の犯人ではないと主張していたが、それと同時に保見は犯行時に責任能力がなかったとも主張していた。要するに弁護人も本心では保見のことを犯人だと思っていたということだ。しかし被告人席の保見は顔色ひとつ変えず、「保見=犯人」という前提で繰り広げられる弁護人たちの主張を平然と聞いていた。
「保見さんは、拘置所では治療を受けられているわけではないので、妄想性障害の症状は悪化しています」
最終弁論が行われた公判後、保見の弁護団は報道陣にそう明かしたが、保見の病状が深刻だというのは素人目にも明らかだった。
■取材は一切拒否
筆者は保見に直接話を聞いてみたく、裁判中に二度、収容先の山口刑務所を訪ねた。しかし、二度とも面会を拒否された。山口刑務所の関係者によると、「取材の人はいっぱい来ているけど、全部断っているみたいだよ」とのこと。無実を訴えるなら、マスコミを通じて自分の主張を世に伝える手もあるはずだが、保見は事件後も他者に心を閉ざし続けているらしい。
〈つけびして 煙り喜ぶ 田舎者〉
事件発生当初に注目を集めた自宅窓の張り紙については、「『火の無い所に煙は立たない』の逆の意味です」「集落の人がこの張り紙を見て、話しかけてきたら、逆に誰が嫌がらせをしているのか聞き出そうと思っていた」と語っていた保見光成。現在は死刑判決を不服として広島高裁に控訴中だが、病状がさらに悪化し、控訴審では第一審とまったく違うことを言い出しても何の不思議もない。
(取材・文・写真=片岡健)
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