【死刑囚の実像】村八分の妄想に陥った凶悪犯 ― 山口5人連続殺人・保見光成の“本当の孤独”
■友達や女の話はほとんどなし
ただ、保見が法廷で語った半生には、正直、身につまされた。
保見は姉3人、兄1人がいる5人姉弟の末っ子として金峰地区に生まれた。小学校は1学年12~13人の小規模で、同じ集落に同級生はいなかった。中学卒業後は2、3人の同級生と一緒に岩国市の会社に就職するが、派遣された現場で「寝る場所が汚かった」ことを理由に3カ月ほどで退職。そして東京で左官をしていた兄を頼って上京し、自分も左官になった。
その後、千葉や川崎で20年以上、左官として働いたが、どこの現場でも悪い評価はされなかったという。「自分は仕事が速いんです」。そう語る保見は少し誇らしげだった。経済的にも不自由していなかったようで、川崎在住時代はスナックによく飲みに行っていたという。
ただ、保見の話には、その時々で仲の良かった友達や交際していた女の話がほとんど出てこなかった。何か趣味があったという話もない。当時の保見は仕事以外では、スナックで店のママや常連客と多少会話を交わす以外にあまり他者との交流がなかったのではないかと想像させられた。
■ひとりで両親を介護していたが……
そして保見は40代になり、「子どもの頃に見ていた金峰の景色が忘れられなかった」と故郷の金峰にUターン。高齢者ばかりの過疎地だが、「バリアフリー関係の仕事をすればいいと思っていた」という。具体的には、家の中に手すりをつけたり、段差をなくしたりする仕事を考えていたようだが、その見通しは甘く、仕事には恵まれなかったようだった。
一方、金峰に帰った当初は元気だった両親は次第に老い、保見がひとりで両親の介護をすることに。保見が50代になった頃、最初に母が、ほどなく父も亡くなった。そして保見は地域の人々から次第に孤立していったという。
「ご両親がいなくなり、寂しくなかったですか?」
弁護人がそう質問すると、保見は「犬がいたから」とだけ言った。保見は当時、チェリーという白い大きな犬を飼っており、事件の頃もポパイとオリーブという別の2匹の犬を飼っていた。犬がいたからひとりでも寂しくなかったというのは、保見の本心ではあるのだろう。しかし正直、「犬しかいなかったのか……」と思わずにはいられなかった。
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