【死刑囚の実像】犬しかいなかった孤独な半生
【死刑囚の実像】村八分の妄想に陥った凶悪犯 ― 山口5人連続殺人・保見光成の“本当の孤独”
――人を殺した人と会う。死刑囚の実像に迫るシリーズ【9】

今年7月、山口地裁で行われた裁判員裁判で死刑判決を宣告された保見光成(65)。判決によると、保見は2013年7月21日の夜から翌22日の午前中にかけ、山口県周南市の山あいにある金峰(みたけ)の集落で、70~80代の住人5人を次々に木の棒で頭などを殴って殺害。さらに被害者の住居2軒に放火し、全焼させた。実行したことだけを見ると、まぎれもない凶悪殺人犯である。
だが、そんな保見に対し、インターネット上では「かわいそう」と同情の声が湧き上がっている。保見が事件前、現場の集落で被害者ら住民たちから「嫌がらせ」を受けていたという情報が流布したためだ。結論から言うと、それはガセ情報だが、保見は別の意味で「かわいそう」と言える人物ではあるかもしれない――。
■妄想だった「嫌がらせ被害」

被告人質問が行われた7月3日の第6回公判。法廷に白い半そでシャツ、黒のスラックスという姿で現れた保見は細身のおとなしそうな男だった。逮捕当初は真っ黒だった頭髪は真っ白になり、短く刈りそろえられていた。第一印象を率直に記せば、「普通の田舎のおっさん」である。
そんな保見は逮捕当初、被害者の頭などを殴ったことを認めていたが、裁判では「脚を叩いただけ」と殺害や放火の容疑を否認。被告人質問では、被害者らの脚を叩いた動機として、事件前に被害者ら集落の住民から受けた「嫌がらせ」の数々を切々と訴えた。しかし……。
「寝たきりの母がいる部屋に、隣のYさんが勝手に入ってきて、『ウンコくさい』と言われました」
「Yさんは、自分が運転する車の前に飛び出してきたこともあった」
「犬の飲み水に農薬を入れられ、自分が家でつくっていたカレーにも農薬を入れられました」
「Kさんは車をちょっと前進させたり、ちょっと後退したりということを繰り返し、自分を挑発してきました」
「車のタイヤのホイールのネジをゆるめられたこともあった」
このように保見が訴えた「嫌がらせ被害」はどれもいささか現実味を欠いていた。本人は話しながら感極まり、ハンドタオルで目頭を押さえる場面もあり、真実を話しているつもりなのは間違いない。しかし、集落の住民たちが保見に対し、そんな無益な嫌がらせをせねばならない必然性は何も見えてこなかった。
保見は起訴前と起訴後に各1回の精神鑑定を受け、2度目の鑑定では事件発生当時に妄想性障害に陥っていたと結論づけられている。判決はこの鑑定結果も踏まえ、集落の住民たちによる「嫌がらせ」は保見の妄想だったと認めたが、妥当な判断だ。インターネット上で巻き起こった保見への同情論は、まぎれもなく被害者や現場住民に対する「二次被害」だろう。
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