マウスの背中で人間の耳を培養! 研究者「5年以内に実用化できる」

 しかし、東大・京大の研究チームが成功した「耳介軟骨」の成型は肋骨の手術を要せず、わずかなヒト幹細胞を用いるだけである。今回研究チームが行ったマウス実験ではiPS細胞開発に伴う細胞リプログラミング技術を応用して軟骨細胞を誘導し、3本の特殊なプラスチック・チューブに注入。人間の耳の形になるように形成すると、それをマウスの皮下に移植したという。その後移植された特殊なチューブはマウス体内でゆっくりと溶けていき、注入されていた軟骨細胞同士が融合していく。すると2カ月ほどでほぼ実物大の「耳介軟骨」が出来上がったそうだ。

 今回の結果を受け、東京大学の高戸教授は「これからも研究を進め、5年後には実用化できるようにしたい」と語っており、研究チームは「小耳症」を抱える人々のために、これからも臨床試験を行っていくということだ。

■人間の腕から鼻が作られる?

 5年後の実用化を目指している東大・京大だが、この技術は「今後の医療を変える」と世界中で研究が進められている。英・ロンドン大学でも幹細胞を使用した研究が数多く行われており、先ごろ、患者自身の腕で「鼻」を作ることにも成功している。担当のアレックス・セイファリアン教授によると「新しく作られた鼻は匂いもわかるようになる」ということだ。

 世界中で取り組まれている人工移植技術だが、腕から鼻というのは、なかなか衝撃的である。しかし東大・京大の技術は「障害を抱えて生まれてきた子供のみならず、動物にかみ千切られるなどして見た目に大きな傷を負った人々も助けることができるようになる」と、世界中で早期実用化を求める声があるということだ。現代医学の発展のため多くの動物実験が行われているが、その命が難病と戦う方々の希望の光となることを祈るばかりである。
(文=遠野そら)

参考:「Daily Mail」、「Daily Mail」ほか

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