「3.11以降に自覚された“恨めしい思い”を描いた」カフカ原作映画『断食芸人』で描かれた恐怖 足立正生監督インタビュー
■自由という概念に縛られた民衆
――何もわかんないですけど、なんかすごくわかる気がしました。俺が感じたのは、映画の中でも言っていますが「囚われた自由」というものを、まるっきり表現してるように感じました。
足立 芸人になって見せ物になって中に入れられているとさ、外にいる人たちが大騒動して逆転していってしまう。もっとも僕が考えなかったらいけないのは、なんでもやれる自分の欲望とか欲求とか。僕も金が無ければ盗むしかないとか思うけどね。だから昔は飛行機盗んだりはしたけど。
――盗む単位というかモノがおかしいですよ!飛行機盗むって!レベルがおかしいですよ!
足立 なんでも自由に見えて、実はその自由っていうのが好き好んで生きてる自由なのか?自分の意志や想いや色んなものを開放しながら生きてる自由なのか?っていったらそうじゃなくて「自由という概念に縛られてる」というかね。
――それをこの主人公は、まるっきり体現して表現してるんだと思いました。
足立 そう思ってもらったんなら、この映画についてもう話すことはいいじゃないですか。
――いや、俺はそう思いましたけど、でも、足立監督の映画は昔からシュールって言われていて、わかり辛い映画などもあるじゃないですか。
足立 今度の映画はものすごいわかりやすいですよ。何を言っても言葉とか行為ってのが絡めとられていってしまう中で、じゃあ何をしたらいいのかな?と、最後までわかんないでしょ? 何をしたいワケでも、何を言いたいワケでもない。そこにブラックホールみたいにみんな吸い込まれるんですよ。
その関係性の中で「みんなもう1回考えたらいいじゃないか」というのはありましたね。
撮影する前からですけど、若い人たちのSEALDsのグループとか一生懸命やってるじゃないですか。
■カフカを知らない世代SEALDsとの交流
――あのこたちは凄くいいと思います。
足立 撮影終わってこれから仕上げに入るってときに、4人ほど学生がハンストを始めたから、私も連帯するために出かけて行ったのね。そしたら彼等が「断固として断食するぞ!」とか言ってるのを見て、言葉使いとかが僕らの世代に近いんじゃないかと思ったりね(笑)。
そしたらさ、紹介してくれた人が「この人が今、ちょうどハンストの映画を撮ってる人なのよ。足立監督って言って、フランツ・カフカ原作の」って言うと「カフカ?誰ですか?」ってね。「ほ~、ここまでギャップがあるか」と。
デモの人がきたら、持ってる本に「断食芸人」って書いてあるのを見て「へぇ?。だんしょく芸人やるんだ」って。ゲイの芸人か?って思ったんだけど、そうじゃないんだよね。彼等にとってみれば食を断つから「だんしょく」でいいワケですよ。何も「だんじき」と読む必要はない。
そういう具合に、僕がイメージしてることと、彼等のイメージしてることにはものすごいギャップがある。だけど、そうやって彼等が彼等の世界を作ろうとしてる。じゃあ、このギャップを含んだことを喜んでやらなきゃダメだと思ってね。少し勉強になりました。
ただ4日目にはドクターストップで、1週間目には歩道を占拠してるから道交法違反だって言われてね。それでも「またやるぞ!」って言ってるから、この映画と同じで、2度目からが本当の勝負だから。
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