「3.11以降に自覚された“恨めしい思い”を描いた」カフカ原作映画『断食芸人』で描かれた恐怖 足立正生監督インタビュー
■カフカと魯迅は同じことを伝えようとしていた
――この映画の2度目の断食のときの服装が真っ白じゃないですか?あれは白装束ってことなんですか?
足立 あれは病院で着させられたもの。1週間、10日閉じ込められてたでしょ?それで出ていってもう1回やるってだけよ。
――でも、足立監督の映画って、観てる側が自由に捉えられるじゃないですか。
足立 カフカの原作がちょうど百年ぐらい前でしょ?近代化が始まるために色々息苦しい世の中になっていくわけですね。それと同じ息苦しさがこの時代にいっぱいある。
そこだけは生かしてやろうと思ったけれども、色々なメッセージをたくさん飾るというのは一切しなかった。
中国の全く同じ時代に魯迅という作家が「狂人日記」とか「阿Q正伝」とか書いてたけれど、ほとんどカフカが書いてるのと同じね。
「外れてしまった人々の生き様の中から、もう1回世の中を見直して変えるしかない」ってところでは、魯迅の方がもっと強力にそれを出してるから。
原発神話と同じで「4年前偶然狼に出会った」と。原発に出会ったわけよね。ナレーションに入れたのはカフカより魯迅の方が多いくらいなの。
――じゃあ、カフカと言うよりも魯迅なんですか?
足立 彼等の小説を読むと、僕なんか映画を観てるというか、全部イメージが彷彿として映像化して現れるようなものがありますよね。そういうようなものを捕まえて、言葉が軽々しく見えていく時代の中で、言いたいことを言うんではなく、その境目にあたる部分を色々なシーンでパッパッと見せていく。これは紙芝居映画ですって僕は言うことにしているんですね。
昔映画のことを電気紙芝居って言ってさ。みんな映画を観にいって「なんだ、紙芝居じゃないか」っていうのは映画に対する悪口で使われる。だから僕は率先して「これは紙芝居だ」と、居直ってね(笑)。
――また、そういうことを(笑)。
足立 紙芝居っていうのを見直してもらわないと困るじゃない。映画のポスターやチラシにこんなに監督の顔がズバーッと出るなんてね(笑)。俺は反対したんだから。荒木(荒木経惟 写真家)が撮りにきてさ「えーと、僕、興味あるのは足立だから」って(笑)。
――でもいい顔してるじゃないですか。
やっぱり牢獄の中が似合うよな(笑)。
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