ナベツネは「天皇制打倒」の元共産党員だった! 保守系路線に鞍替えした理由とスパイ疑惑とは?

 その時の渡辺のことを、高は次のように描写している。

「若い男の鋭い目の縁にかすかな安堵と喜びが浮かんでいた。その男もまた、あの戦争と戦後を呼吸してきたに違いなかった」

 その時の気持ちを、高は綴っている。

「熱心にメモを取る男が、私の思いを聞き取ってくれるとは思えなかった。だが、同じ時間を生きる何者かが聞いてくれていると思えたのだ。私たちの頭上の空は深く澄んでいた。すべては、空の深さが受け止めてくれるように感じられた」

 共産党の発行したテキスト「中核自衛隊の組織と戦術」には、地主に虐げられた貧農たちは共産党の味方だと書かれていたが、それとは正反対の現実に直面し、高も虚しさを感じていたようだ。

 渡辺の取材は、4月3日の読売新聞で「山村工作隊のアジトに乗り込む」というスクープ記事となった。これをもって、渡辺は本紙政治部に抜擢された。読売新聞のトップにまで上り詰める入口に、命がけの取材があったのだ。
(文=深笛義也)

■深笛義也(ふかぶえ・よしなり)
1959年東京生まれ。横浜市内で育つ。18歳から29歳まで革命運動に明け暮れ、30代でライターになる。書籍には『エロか?革命か?それが問題だ!』『女性死刑囚』『労働貴族』(すべて鹿砦社)がある。ほか、著書はコチラ

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1959年東京生まれ。横浜市内で育つ。18歳から29歳まで革命運動に明け暮れ、30代でライターになる。書籍には『エロか?革命か?それが問題だ!』『女性死刑囚』『労働貴族』(すべて鹿砦社)、『罠: 埼玉愛犬家殺人事件は日本犯罪史上最大級の大量殺人だった』(サイゾー)がある。ほか、著書はコチラ
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