借金、虐待、DV…国が見捨てた「非エリート風俗嬢」の実態! 坂爪真吾インタビュー

――実際に相談会を開いてみて、どんな悩みが多かったのでしょうか?

坂爪 一般的な悩みが多かったですね。債務整理や借金そのものの問題、離婚、虐待、DVなどです。

――借金ならば債務整理をする方法が考えられますね。

坂爪 もし債務整理をしても、すぐにまた借金をしてしまう可能性があるので、どうすれば生活を立て直すことができるのかが重要で、債務整理については弁護士さんに、生活についてはソーシャルワーカーさんにお願いしました。

――生活の立て直しというのは具体的には?

坂爪 たとえば生活保護を受給し、家計をしっかり管理し、貯蓄が破綻しないようにする。彼女たちのなかには、知的障がいを患っていて無計画にお金を使ったり、ストレスで散財してしまう人もいるので、そういった背後にあるものを治療したり、解決したりという積み重ねが必要だと思います。

――日本では生活保護受給者に対するバッシングがすごいですよね。まずは家族に頼れと。

坂爪 彼女たちはそもそも家族とうまくいっていない人が圧倒的に多いですから、そういう人たちに家族に頼れと言っても無理があります。また生活保護を受給することは権利ですから、権利をしっかりと行使する必要があるのかなと。

――そのような活動がひとつの解決策になり得るとお考えですか?

坂爪 そもそも福祉と風俗でやっていることはあまり変わらないのかなと思うんですよ。福祉は昼の世界で、風俗は夜の世界という違いこそありますが、どちらも困っている人を包摂しているので、もう少し福祉と風俗が連携してもいいのではないかと。

――包摂という言葉がありましたが、風俗で働く彼女たちは社会から排除されているとも言えます。無店舗型風俗であるデリヘルの隆盛により、彼女たちは以前にも増して社会から見えない存在にもなりつつあるのかなと。何が彼女たちを社会から見えなくしているのでしょうか?

坂爪 逆説的ですが、社会から見えないほうが彼女たちは稼げるんです。他人に風俗で働いていると話しても好奇の目に晒されるだけで良いことはない。だからこそ、彼女たちがあえて見えないようにしている部分もあります。

 他にも社会の側が風俗に対する理解がないこともあります。次回の相談会に某テレビ局の取材が入るのですが、その中でも取り上げるべきかという議論があったと聞きます。その反対意見というのは、風俗で働く前に支援すべきで、一度働いてしまった人を支援するのは手遅れではないかという意見があったと聞きました。

 そういった社会の風俗への偏見が見えにくさにつながっているのかなと思いますね。

――坂爪さんご自身は同書の中で風俗を容認すべきだと。その理由とは?

坂爪 そもそもいくら否認しても、風俗はなくなりませんし、これまでもインフォーマルな形での社会的包摂として、風俗でしか救われなかった人たちがいるのも事実です。

 また、風俗を不可視化し黙認することは、風俗の中での出来事が不可視化され黙認されることを意味しますから、社会的に有害です。だからといって、社会的、法律的に公認することは、以前にも論客たちの議論で破綻していますし、風俗の存在自体が法律上規制や監視の対象です。そう考えると、この世界に足を踏み入れた人たちに過剰なリスクやスティグマを背負わせず、出入りを自由にしながら、社会とのつながりをつくっていけるような容認だと思うんです。つまり、先ほども申し上げましたが「風俗の社会化」こそ重要なのではないかと。

――最後に、その社会化の試みのひとつである今後の相談会はどのような展開を考えているのでしょうか?

坂爪 月に1回開催しようと考えています。

 今後は生活保護の申請に同行したり、他のNPO、たとえば食糧支援や就労支援の分野で活動している団体と連携してやっていければと。

 風俗で働いている女性たちは国があまり接触できていない人たちが多いので、情報の宝庫だとも思うのですが、国が動いてくれないなら自分たちでどんどん動いていこうということです。
(取材=本多カツヒロ)
 
坂爪真吾(さかつめ・しんご)
1981年新潟市生まれ。東京大学文学部卒。一般社団法人ホワイトハンズ代表理事。 2014年社会貢献者表彰、2015年新潟人間力大賞グランプリ受賞。著書に『セックス・ヘルパーの尋常ならざる情熱』(小学館)、『はじめての不倫学』(光文社新書)、『男子の貞操』(ちくま新書)がある。

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