秋葉原通り魔事件犯人の作品も…! 日本の死刑囚の絵画展開催者に聞く「絵の特徴や制作環境」
――死刑囚の方たちは、どのような環境で作品を制作しているのでしょうか?
櫛野「勘違いしてる方が多いんですけど、懲役刑の方は社会復帰を目指しているので、刑務所の中でタンスや救急箱などを作って、職を身につけようというのがあるんです。でも、死刑囚は、その名の通り死ぬことが刑なので、独居房でそこから出ることはないし、日常の雑益や仕事が一切ないんです。死刑囚同士の交流もないし、24時間監視され、刑務官としか話が出来ない。面会も支援交流者が3~5名ぐらい決まっていて、その方々以外とはまったく無し。さらに、死刑執行がいつ行われるかは、当日の朝にならないと本人もわからない。「その日」が来たときには、朝食を食べ終わった後に刑務官に連行されて一時間後に死刑が執行されます。自分がいつ死ぬかわからない、ひたすら冷や汗をかきながら、一日一日を生き存えているという状況なのです。そんな状況の中で、彼らは瞑想したり、詩を書いたり、絵を描いたりしているということですね」
――絵を描きたい場合は、画材はどうするのでしょうか?
櫛野「拘置所の中に売店のようなものがあって、お金がある人は刑務官に頼んで買ってもらえるんですけど、基本的には手紙を書くためのものしかないんです。東京拘置所に電話して聞いたところでは、色鉛筆、ボールペン、蛍光ペン、筆ペンぐらい、あと画用紙と便せん。色数も制限があるので、緑が欲しい場合は色を混ぜて描いています。例えば、今回、初めて出展される広瀬健一さん本人の手紙によると、花の樹液を擦って色を出したり、コーヒーの粉で色を作ったり、皆さん、それぞれ画材がない中で絵を描かれています。でも、そういう状況が絵を描くときの原初的な動機といえるんじゃないかと思うんです」
――死刑囚の置かれている状況をよく反映している表現の特徴はありますか?
櫛野「細かい絵を描く方が非常に多いと思います。例えば、松田康敏さんは、もう死刑執行されて、この世には居ない方です。知的障害があったとされ、犯罪を犯してしまった人なんですが、彼は貼り絵を主に制作していて、インクの出なくなったボールペンを色紙に押し当て、ボールペンの先端に付いた0.1ミリぐらいの紙を、一個一個貼っていきます。表現がどんどん細かくなるのは、たぶん、『この絵が完成するまでは死刑執行されない』という一種の暗示かなと思いますね」
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