秋葉原通り魔事件犯人の作品も…! 日本の死刑囚の絵画展開催者に聞く「絵の特徴や制作環境」

秋葉原通り魔事件犯人の作品も…! 日本の死刑囚の絵画展開催者に聞く「絵の特徴や制作環境」の画像5宮前一明『手段継承』

――作品自体から感じることはどんなことでしょうか?

櫛野「障害のある方で自閉症の場合は内的に閉ざされてるからすごい絵を描く方が多いんですけど、死刑囚の方は外的要因で閉鎖的な環境にある方が多いです。拘置所に入る前から絵心があった方はほんの数名でしかいません。それなのに、例えば、埼玉愛犬家殺人事件の風間博子さんとか、作品が蜷川泰司著『迷宮の飛翔』(河出書房新社)の挿絵に使われるなど、卓越した絵を描く方がいます」

――死刑囚の作品を通じて、表現やアートというものについて、認識が変わったり、新たな発見をしたということはありますか?

櫛野「その死刑囚がどんな犯罪を犯したのかという問題から、なかなか切り離せないと思うんですよ。ただ、社会的に悪とされてる人たちが描いた作品ですが、緻密な絵を描く人がいたり、すごい貼り絵をする人がいたり、すごい描写力の方も中にはいらっしゃるんで、観ている人は感動をしたり、驚愕したりしているんです。それはそれぞれの人が持ってる社会的良識や道徳心に反比例して起こる現象だと思うんですよ。だから、死刑囚の作品と対面することは、一人一人がこれまで持ってた既存のルールや常識みたいなのを揺さぶるきっかけになるんじゃないかなと思ってます」

――クシノテラスがこれから目指しているもの、アピールしていきたいことについて教えてください。

櫛野「自分が直感的に『これはいま展示しなきゃいけない』と思えるものをどんどん紹介していきたいですね。『こういうものを出していいのか』という倫理観は観てくれた人に問えばいいと思っているから。とにかく境界を揺さぶるような表現、これまで『美術』というものの外側にあったために紹介されて来なかったものを世の中に突き付けていきたいと思っています」
(聞き手=ケロッピー前田)

櫛野展正(くしののぶまさ)
キュレーター。1976年生まれ、岡山大学教育学部卒。社会福祉施設勤務を経て、2012年から2015年まで、アールブリュット美術館・鞆の津ミュージアムのキュレーターを務める。現在は独立し、ギャラリー「クシノテラス」を営む。主な展示に「ヤンキー人類学」「花咲くジイさん~我が道を行く超経験者たち~」「スピリチュアルからこんにちは」、主な著書に『ヤンキー人類学 突破者たちの「アート」と表現』『シルバーアート 老人芸術』『キュレーションの現在―アートが「世界」を問い直す』などがある。

■『極限芸術2~死刑囚は描く~』展
会期2016年4月29日(金)~ 2016年8月29日(月) 12:00~18:00
開館土・日・月曜・祝日(6/11、6/25、6/26は休館いたします)
会場クシノテラス
観覧一般 500 円、小学生以下・障がいのある方 無料

急遽休館する場合もありますので、詳細はお問い合わせください
助成=公益財団法人 福武財団
協力死刑廃止のための大道寺幸子・赤堀政夫基金、園山萠子、加藤テイ子

会期中の5月29日は都築響一、7月4日は茂木健一郎によるトークイベントを開催

■ケロッピー前田
1965年東京生まれ、千葉大学工学部卒後、白夜書房(コアマガジン)を経てフリーランスに。世界のアンダーグラウンドカルチャーを現場レポート、若者向けカルチャー誌『ブブカ』『バースト』『タトゥー・バースト』(ともに白夜書房/コアマガジン)などで活躍し、海外の身体改造の最前線を日本に紹介してきた。近年は、ハッカー、現代アート、陰謀論などのジャンルにおいても海外情報収集能力を駆使した執筆を展開している。新刊、前田亮一『今を生き抜くための70年代オカルト』(光文社新書)が絶賛発売中!!

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