官能シーンが“扇情的すぎる”という理由で封印!? 強迫神経症の映画監督が作った問題作とは?

――絶滅映像作品の収集に命を懸ける男・天野ミチヒロが、ツッコミどころ満載の封印映画をメッタ斬り!

今回の映画:『アビエイター』
2004年/アメリカ

官能シーンが扇情的すぎるという理由で封印!?  強迫神経症の映画監督が作った問題作とは?の画像1※イメージ画像:『アビエイター』松竹

 何度もアカデミー賞にノミネートされながら、常に上手が存在し、そのたび涙を飲んできたレオナルド・ディカプリオ。まるで清原和博が打っても打っても(球を、ですよ)、不運にも同時期にデストラーデ、ペタジーニといった歴代屈指の外国人名選手がいたため、ホームラン王や打点王のタイトルに手が届かなかった様相に似ている気がする…。だが、今年の第88回アカデミー賞で、ついにレオ様は主演男優賞を受賞し悲願のオスカー像を手中に収めた!

 その対象作品『レヴェナント 蘇えりし者』が公開された。そしてこの出来事で思い出されるのは、ディカプリオが2004年に主演を務めたマーティン・スコセッシ監督の『アビエイター』だ。作品は第77回アカデミー賞で最多の11部門にノミネートされ5部門を受賞するのだが、ディカプリオは主演男優賞を惜しくも逃してしまった。作品で彼が演じたのは、ハワード・ヒューズ。1930~1950年代に「地球上の富の半分を持つ男」と呼ばれた波乱に富んだ半生を送った男だった。

 アビエイターとは「飛行機操縦士」という意味。もともとヒューズは航空業界の超大物企業家だ。自らの操縦で「大陸横断無着陸飛行」と「世界一周飛行」の世界最短記録を樹立し、世界最速の飛行機も作ってしまうという、天才パイロットにして有能な開発者だった。また資産家だった両親の早世により莫大な遺産を趣味の映画製作に注ぎ込み、多くのハリウッド女優と浮名を流した羨ましい男でもある。だがその生い立ちは、我々が想像を絶する辛い日常がくり返されていた。

 子どもの頃から潔癖症の母親に育てられたヒューズは「菌」を恐れ、服が着られず全裸で部屋に引きこもり、ドアノブは素手で触れられない、血が出るまで手を洗い続ける、牛乳瓶にオシッコする、など重度の強迫神経症に苛まれていた。

 さらに搭乗する飛行機が落ちて全身に火傷を負い、痛みから逃れるためコカイン中毒に…。この難しい役どころを演じるためにディカプリオは、撮影前に強迫神経症患者と約2カ月行動を共にするという行動に出る。その結果、彼自身も強迫神経症を発症してしまったという。そういった類まれなる役者魂を知ると、改めて今回の受賞を讃えたい。

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