“出産”はもう無理?50年間ずっと妊娠している91歳の老婆!=チリ

 人間の妊娠期間は、一般に十月十日と言われる。動物の中でもっとも妊娠期間が長いのは象で、なんと2年だという。しかし、人間でありながら50年間も妊娠中だというチリ人女性、エステラ・メレンデスさん(91歳)の話をお届けしよう。


■子宮外妊娠から胎児が石化

 ある日、自宅で転んだエステラさんは念のために病院でX線撮影を受けた。すると、医師から予期せぬ事実を告げられる。なんと彼女は妊娠しているというのだ。胎児は体重2キロで、妊娠中に死亡して石灰化、その後、母体に50年もの間留まり続けていたのだ。エステラさんは自分が妊娠していたことにまったく気づかず、長い間子どもができないことに悩んでいたのだと語る。診察した医師によると、「胎児は大きく育ち、患者の腹腔内のほとんどを占めていた」ということだ。患者の年齢を考慮し、胎児摘出手術を行う予定はないという。

出産はもう無理?50年間ずっと妊娠している91歳の老婆!=チリの画像1エステラさんの腹部のX線写真 画像は「CNN」より

 それにしても、なぜこのようなことが起こるのだろうか。この現象は「lithopedion babies(石胎もしくは石児)」と呼ばれ、子宮外妊娠により引き起こされる。胎児が死亡後、羊膜の嚢が感染症に対する身体の防御システムとして石灰化してしまう現象だ。通常、子宮外妊娠では胎児は成長できず、母体に自然に吸収されたり、流産して体外に押し出される。しかし胎児が大きいとそのまま母体に留まってしまうこともあり、通常は手術で摘出される。現代において「石胎」現象は医療の発達によって稀なケースとなったが、医療が未発達の国や地域では未だに起こり得るらしい。

■これまで300例の記録がある「石胎」

「石胎」は過去、世界で約300例が記録されているということだ。最も古い石胎の記録は1500年頃のフランスで、マダム・シャトリーという名の40歳の女性である。陣痛が始まったのに胎児は出ず、羊水と血液のみが出てきた。当時はそれ以上為す術がないので放置されたところ、彼女はその後28年間もの間、死ぬまで腹痛と食欲不振に悩まされた。彼女の夫は妻が死んだ時に解剖を要求したところ、腹の中に石灰化した女の子の胎児が見つかったそうだ。

 また、似たようなケースは中国でも報告されている。中国南部に住む92歳のファンさんは、胎児を60年もの間体内に留めていた。彼女は1948年に妊娠したが、赤ちゃんは子宮外妊娠のため死亡していると医師から告げられた。当時の彼女は胎児摘出の手術費用を工面できず、「お腹の事は考えないことにしていた」とファンさんはいう。しかしついに60年後、ついにファンさんの体内から石胎は手術で取り出された。

 胎児が身体の中で死亡してしまった場合、母体に吸収されたり、母体に悪影響を及ぼさないように石灰化したり――と、人間の身体は実によく作られている。しかし50年以上もお腹の中に石胎を抱えているのは、さぞ苦しかったに違いない。
(文=三橋ココ)

参考:「VAGABOMB」、「NBC」、「BBC」、ほか

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