2500年前の若い男「アーチー」の骸骨をゲノム解析!古代フェニキア人の謎に近づく?
1994年に北アフリカのチュニジアの首都チュニス(古代都市カルタゴ)、ビュルサの丘の遺跡で発掘されて同国立博物館で長年保管、展示されていた男性の骸骨、通称“ビュルサの若い男”、またの名を“アーチー”――。
■“アーチー”のルーツは地中海北部の沿岸
2500年前(紀元前6世紀頃)にフェニキア人として生きたと推定される身長170cm、推定年齢19歳~24歳のこの男性“アーチー”の遺骨は、最近になりさらなる調査のためにフランスに移送され、当時のものとしては史上初となる完璧なゲノム解析が行われたと5月26日の「DailyMail」が報じている。
家系調査の結果、母系の血統のルーツを地中海北部の沿岸に辿ることに成功。これはヨーロッパでも稀な遺伝子が北アフリカで確認できた珍しい証拠であるという。そして専門家らは、今回の発見が既知の人類大移動の定説を覆す可能性があると注目しているようだ。
■フェニキア人とは何者か?
当時カルタゴはレバノンからの入植者によるフェニキアの港として確立されていた。この入植者とは、現在の南シリア付近を拠点とし、紀元前15世紀頃より都市国家を形成し、紀元前12世紀には地中海方面に進出して海上交易で活躍していた古代フェニキア人だ。
古代フェニキア人は、アルファベットを最初に生み出し、中東における初期文明を担った民族だ。彼等は地中海全域と、取引エリアであったイベリア半島方面にも勢力を拡大して影響を与えていた。だが、彼らに関する記述は非常に少なく、ギリシャとエジプトの学者によって記述されていたパピルスが少量あるのみだという。ではフェニキア人“アーチー”の祖先はどこに繋がるのだろうか。
■“人類の旅”をめぐる壮大な調査へ
ニュージーランドのオタゴ大学の分子人類学者リサ・マティソー・スミス氏は「“アーチー”のDNAがポルトガル方面で見られる現代人の特徴と酷似している」と推測している。生物が持っている単一の染色体上の遺伝的な構成(DNA塩基配列)をハプロタイプというが、“アーチー”のハプロタイプは「U5b2c1」で、これはヨーロッパで最も古いもののひとつであり、狩猟活動を行っていた民族と関連があるという。
ただ「実は今日のヨーロッパでこのタイプが見つかることは1%未満となっており、とっても珍しい」ようで、現代のレバノンの人々計47人のミトコンドリアDNAを分析して母系を調べたが、U5b2c1に該当する人は一人もいなかったということだ。
しかし、過去の調査ではスペインの北西部に居住していた古代の二つの狩猟集団でU5b2c1が存在したとも判明しており、研究チームは彼等の血統が地中海北部に関連すると見ているという。「今回の発見と今後の継続的な調査で、フェニキアの人々と文化の起源についてさらに詳しく判明すると良いのですが」とスミス氏は今後の研究についての意欲を語っている。
それまでの狩猟型から農業に従事する流れが中近東からはじまる一方で、狩猟型に固執したイベリア半島南部や島嶼部のいくつかの子孫グループは貿易ネットワークを介してカルタゴに到着し、人種のるつぼとなっていったのだろうか? 人類のルーツや流れを知る壮大な調査はこれからが本番である。
(文=Maria Rosa.S)
参考:「Daily Mail」、「Design&Trend」、ほか
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