「ツメ噛み」「指しゃぶり」を叱るのは間違い! 実は免疫力をつけるための行為だった?
子を持つ親なら、我が子に悪いクセがあれば、一刻も早く止めさせたいとやっきになるだろう。特に、指しゃぶりについては、3歳~6歳児が精神的な安心感を得たくてしてしまうことはわかっているが、人目にもつきやすく、しつけウンヌン言われそうで親としても気が気ではない。だが、最新の研究で、これら一見悪癖に見えるクセには、意外な“効能”が隠されていることがわかった。
■ツメ噛み、指しゃぶりのクセはアレルギー疾患リスクを下げる
19世紀、人々は今よりずっと衛生状態が悪い環境で暮らしていた。にもかかわらず、現代人のほうがアレルギー疾患にかかりやすいのはなぜか? この疑問に対して、ニュージーランド・オタゴ大学のボブ・ハンコックス准教授率いる研究チームは「日常生活の中で、病原体などに接触する機会が減ったためではないか」という仮説を打ち出し、検証を試みた。
英紙「Daily Mail」(7月11日付)によると、1990年代はじめ、ニュージーランドに住む1972年~73年生まれの1,037人を対象に、「ツメ噛み等の不衛生な習慣によって、アレルギー発症は減るのか」という健康調査を行った。彼らを5歳~32歳まで追跡調査し、13歳と32歳のときにはアレルギーの有無を調べるために「プリックテスト」(皮膚にアレルギー原因物質を置いて、その部分に針で微小な傷をつける)を実施した。
すると、どちらの年齢のときにも「1つ以上アレルギーがある人」は全体の49%いた。しかし、子どもの頃にツメ噛み、指しゃぶりのいずれかクセがあった人のアレルギー罹患率は38%に留まり、両方のクセがあった人では32%まで下がる結果となった。
■ツメの下のバクテリアを摂取し免疫力が高まる
ハンコックス准教授は、この結果を小児科専門誌「Journal Pediatrics」に“衛生仮説”を裏付けるものとして発表している。この衛生仮説とは、乳幼児期の衛生環境がその人の免疫系発達に影響を及ぼし、その後アレルギーになりやすいかどうかを決めるというもの。
具体的に言えば、微生物にさらされることで体内の免疫力が高まり、アレルギーの形成リスクが抑えられることで、子どもたちが自分のツメの下で生きているバクテリアを、ツメ噛みや指しゃぶりで口から摂取するケースがあてはまる。
しかし、この発表によって世の中の認識がいっぺんに変わるというものでもないだろう。研究に参加した医学生のステファニー・リンチさんも「だからといって、子どもたちに『どんどん指をしゃぶれ、ツメを噛め!』って激励するわけじゃありませんから」と話している。また、ぜんそくや花粉症の発症阻止には効果がなく、永久歯が生える頃までツメを噛んでいると、出っ歯になりやすいため注意が必要だ。
とはいえ、少なくともこの発見は子どものツメ噛み、指しゃぶりで悩んでいるママたちにとっては福音となるのではないだろうか。
(文=佐藤Kay)
参考:「Daily Mail」、「CNN」ほか
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