脳に埋め込み電流を流す「ブレインチップ」で記憶力が劇的向上! 受験勉強から暗記科目が消える!

 広辞苑などの国語の辞書はもちろん、英語をはじめ各国語の辞書や学校の教科書などが暗記の苦労なしに頭に入るとしたらどんなに便利だろうか。しかし驚くなかれ近い将来、ごく小さいコンピューターチップを脳に埋め込むことで、人間の記憶容量が飛躍的に高まることが見込まれているのだ。


■記憶力を全体的に向上させる“ブレインチップ”

 マイクロSDカードなどのメモリーカードはちょっと意識しないうちに急速に容量がアップしていて驚かされることがあるが、こうした技術進歩と同じように人間の脳の記憶容量もどんどん増大して大量に物事が記憶できたならばと夢想したことはないだろうか。だが驚くべきことに、それは決して見果てぬ夢というわけでもなさそうなのだ。

 アメリカ南カリフォルニア大学の神経工学の専門家であるセオドア・バーガー博士は、記憶力を全体的に向上させる脳へのインプラント機器“ブレインチップ”を開発している。サルとマウスの脳では何度も実験が行われてその効果が確認されているが、近い将来に向け、人間の脳への適用が準備されていることを英「Daily Mail」紙などのメディアが伝えている。

 SF作家ウィリアム・ギブスンの短編小説『Johnny Mnemonic』を原案とした、1995年公開の映画『JM』では、キアヌ・リーブス演じる主人公の“記憶屋ジョニー”には脳に大容量記憶装置が埋め込まれているという設定だが、これと同じようにまさにサイバーパンクSFを実現させるガジェットがこの“ブレインチップ”なのである。今後人類が受験勉強から解放される日は近いのかもしれない。


■“ブレインチップ”は記憶媒体ではない

 記憶力を飛躍的に向上させるこの“ブレインチップ”だが、『JM』の設定とはやや違い、決して大容量メモリーカードやハードディスクのような記憶媒体ではない。つまり、あくまでも情報を記憶しているのは“生身の”の脳なのである。ではいったい“ブレインチップ”はどんな働きを行って記憶力を高めるのか?

脳に埋め込み電流を流す「ブレインチップ」で記憶力が劇的向上! 受験勉強から暗記科目が消える!の画像1画像は「IEEE Spectrum」の記事より

 そもそも我々の記憶には明日になれば忘れてしまうような「短期記憶」と、しっかりと覚えていていつでも思い出すことができる「長期記憶」がある。例えば英語の勉強で1時間に30個の単語のスペルと意味をその場で新しく覚えたとしても、翌日以降にそのすべてを覚えているとは限らないことは、いやというほど思い知らされているのではないだろうか(!?)。

 あるいは、よく行くショッピングモールなどの広い駐車場に自動車を停めた場合、買い物を終えて帰るまでは車を停めた場所を覚えておかないと厄介なことになるが、帰路に就けばすぐに忘れても問題はなく、実際に数日経てば特定の日にどこに車を停めたのか、思い出そうとしてもなかなかできないだろう。

 このように、覚えようとした情報はいったんは「短期記憶」としてしばらくはいつでも思い出せるものになっているのだが、その後に(主に睡眠中に)脳が情報をふるいにかけて、重要度が高いものを選んで「長期記憶」として保存していると考えられている。そしてこのバーガー博士の“ブレインチップ”は、脳を“ダマして”短期記憶を長期記憶へと変えてしまうデバイスなのである。


■短期記憶を長期記憶に“強制変換”

 短期記憶を長期記憶に“変換”する際に、記憶の保存場所と考えられる脳の海馬の一部で、あるパターンの電流が発生していることが突き止められている。この電流によって、選ばれた短期記憶がしっかりとした長期記憶へと変換されているのだ。

 そこでこの脳に埋め込まれた“ブレインチップ”は、この電流とそっくりの電流を発生させることで脳をダマして、現在“水揚げ”されている短期記憶を強制的に長期記憶へと変換してしまうのだ。もちろんやみくもにすべての経験を長期記憶にすることにあまり意味はないと思われるが、これはぜひとも覚えておきたいという物事はこの技術を使って効果的に記憶できることになる。とすればやはり、未来のテスト勉強や受験勉強は大きく変わるのかもしれない。

 何かと興味深いバーガー博士の“ブレインチップ”は、実績ある起業家のブライアン・ジョンソン氏の協力を得て、新たに設立されたスタートアップ企業「Kernel」を通じて民間医療技術として普及させる道を探っているという。

脳に埋め込み電流を流す「ブレインチップ」で記憶力が劇的向上! 受験勉強から暗記科目が消える!の画像2画像は「Daily Mail」の記事より

 そして現在、“ブレインチップ”はある病院内でてんかん患者を対象にテストが行われている。医療技術として公認された暁には、まずは難関校を目指す受験生などの利用希望者が殺到することがイメージされるのだが、残念ながら(!?)当初はアルツハイマー病患者など、記憶障害を持つ方々への補助機器としての活用が第一優先であるということだ。願わくは技術がより発達し、埋め込まなくとも頭皮からの刺激で同じ効果を発揮するデバイスが開発されれば一気に普及が進むのではないだろうか。
(文=仲田しんじ)

参考:「Daily Mail」、「IEEE Spectrum」ほか

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
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