「ここ数年のアジア映画でNo.1」! 麻薬、性奴隷、ゲイ、「イスラム国」…フィリピンの貧困を描いた衝撃作/石井光太インタビュー
――日本も貧富の格差が拡大していますが、こうした貧困スラムが増える可能性もあるのでしょうか?
石井 日本だって他人事ではありません。農業大国だったフィリピンがグローバル化によってスラムが拡大したのと同様、マンパワーが機械に置き換わることによって貧困層が増えていくのは確実でしょう。それに、今の日本には自己肯定感が低すぎて精神を病んでいる人がたくさんいるでしょう? DVや虐待なんてまさにそうだと思うんです。貧困スラムではないですが、これはまさに、スラムと同じ構図の負の連鎖が日本にもはびこっているからだと思いますね。
――ズバリ、本作に対する評価は?
まさにスラムのリアル。そして何より人の生きる力に圧倒された。何十年と変わらぬ貧困の姿。ここ数年のアジア映画で NO.1。
――ありがとうございました。では最後に、TOCANA読者のために石井さんの「オカルト体験」をお伺いしたいのですが?
石井 オカルトですか?(笑)実は、海外ではほとんどオカルト話とか聞かないのですが、日本ではオカルト的なことがありましたよ。昔、高田馬場のラブホテル街のマンションにタイ人のおばさん占い師がいたんですが、夜中の2時3時くらいに行ったら、歌舞伎町で働いているタイ人の女性たちがどんどん来てね。おばさんは1人1人占って「赤ちゃんの死体から抽出した脂」とか売ったりしてたんですよ。「赤ちゃんが死んだ脂をつけると一晩だけ美人になれる」とか言ってたかな、本当かどうか知らないけどね。
で、占ってもらっていた女性に何で占ってもらっているのか聞いたら、「タイ人が日本人に占ってもらっても、パワーが出ないから、ここに来てる」って言ってたね。そこで、思い出したんだけど、その昔日本にいるタイ人に「タイ人はどういうオバケをみたりするの?」って聞いたら、「見ない。オバケは国境を越えられないから」って言われて妙に納得したことを思い出しましたよ。グローバル社会の中で、唯一グローバルになれないのがオバケなのかなって、思いましたね(笑)
――ありがとうございました。
負の連鎖はフィリピンだけではなく、国境を越え拡大し、そして世界に蔓延していく。ここに、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領による過激な麻薬撲滅への道程も見えてくるのではないだろうか? 果たして、ドゥテルテ大統領の決意どおり、白と黒の世界を取り戻すべきなのか、それともグレーを残し続けるべきなのか、単純なお金や法律という枠を超えて「人間の尊厳を守るために」考えていかなければならない。楽しい夏休みを過ごすだけではなく、『ローサは密告された』を見て“考える夏の1日”を過ごしてみてもいいかもしれない。
石井光太さん(作家)
経歴:『物乞う仏陀』(文藝春秋)でデビューして以来、国内外を舞台にしたノンフィクションを中心に、児童書、小説など幅広く執筆活動を行っている。2012年「情熱大陸」に出演。2013年には『遺体―震災、津波の果てに―』(新潮社)を原作に、君塚良一監督、西田敏行さん主演の映画『遺体 明日への十日間』が公開された、常に注目を集める作家である。近著に、7年ぶりの本格海外ルポとなった『世界の産声に耳を澄ます』(朝日新聞出版)がある。
7月29日(土)より、シアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー!
監督:ブリランテ・メンドーサ
出演:ジャクリン・ホセ、フリオ・ディアス
配給:ビターズ・エンド
©Sari-Sari Store 2016
公式サイト: http://www.bitters.co.jp/rosa/
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2024.10.02 20:00心霊「ここ数年のアジア映画でNo.1」! 麻薬、性奴隷、ゲイ、「イスラム国」…フィリピンの貧困を描いた衝撃作/石井光太インタビューのページです。フィリピン、殺人、麻薬、売春、ロドリゴ・ドゥテルテ、スラム、ローサは密告された、グローバル化、石井光太などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで