会田誠も村上隆も絶大な影響を受けた「伝説の芸大解剖学」講義とは!? 解剖学者・三木成夫の世界をその弟子・布施英利が解き明かす!
――布施さんも、三木成夫との出会いがあったからこそ、解剖学者になられたのだと思います。三木先生から最も影響を受けているところはなんでしょうか?
布施「大学入ったときの三木成夫との出会いは、私にとって、マラソンでいう伴走者を見つけた感じでした。そのあとも、ずっといっしょに走ってきました。今回、こういう本を書いたのもそうですが、三木成夫の著作を通して融合したいんです(笑)。5年に一回か、10年に一回、“困ったときの三木成夫”とでもいうべき、三木に立ち返る時期があります。今回も、そんな三木回帰のタイミングで本を作ることができました。そして、回帰するたびに三木成夫の考え方が私の人体に血肉化されていくんです」
――TOCANAとしては、三木成夫の師匠が、雪男捜索隊の隊長で知られる小川鼎三(ていぞう)であることも気になります。
布施「小川鼎三は本気でヒマラヤにネアンデルタール人みたいなのが生きていると信じていたんでしょう。だから、遠征費をかき集めて探しに行ったんだと思います。周りから見るとそんなの見つからないだろうって、実際、見つからなかったわけですけど(笑)。三木から小川が雪男を探しに行ったことが新聞に載ったみたいなことを聞いた覚えはあります。でも正直、三木成夫の方がオカルト的な様相が強いと思いますよ」
――「人間は星だ」っていう言葉の使い方がすでにオカルティックですね。
布施「今回の本でいうと、三木成夫のオカルト的な要素を取り去った上で出てくるもので構成しようとしています。だから、もし三木成夫のオカルト的なものを期待するなら、彼自身の著作を読んでもらえれば、求めているものがあるかもしれません。私は三木成夫を解剖学の領域に引き戻そうとしたんです。だから、本の構成も、ちゃんと解剖学になっていて、内臓とか、神経とか、血管とか、それぞれに分けて書いてあります。それでも普通の解剖学とは全然違う音楽がなっているような、生命というものにベタッと触れてしまった感じが伝わってくるところに、三木成夫ならではの独自の世界があると思います」(後編に続く)
(文・写真=ケロッピー前田)
布施英利(ふせひでと)
解剖学者・美術批評家。1960年群馬県生まれ。東京芸術大学美術学部卒業。同大学院美術研究科博士課程修了(美術解剖学専攻)。東京大学医学部助手(解剖学)などを経て、現在に至る。大学院生のとき、恩師・三木成夫の紹介で養老孟司と出会い、27歳のとき養老との共著『解剖の時間』を出版、28歳で単著『脳の中の美術館』を出版。大学院生のときに出版したこの二冊を皮切りに、現在まで約50冊の著書を出す。主な著書に『脳の中の美術館』『体の中の美術館』『絵筆のいらない絵画教室』『自然の中の絵画教室』『「進撃の巨人」と解剖学』など。また美術批評の著作も多く、『「モナリザ」の微笑み』『構図がわかれば絵画がわかる』『遠近法がわかれば絵画がわかる』など。解剖学をベースに芸術と科学の交差する美の世界を探求している。
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2024.10.02 20:00心霊会田誠も村上隆も絶大な影響を受けた「伝説の芸大解剖学」講義とは!? 解剖学者・三木成夫の世界をその弟子・布施英利が解き明かす!のページです。村上隆、ケロッピー前田、三木成夫、会田誠、布施英利などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで