家族同士で殺し合い、10歳娘も通電…! 実録ホラーマンガ家が語る「北九州監禁殺人事件」死者7人の“本当の惨状”!

■マインド・コントロールを描きたい

――現在のところまでを読むと、相当長い作品になりそうですね。

稲垣 今第12話まで描きましたが、7人死んでいる事件ですが、まだ誰も死んでいないですしね……。とりあえずこの事件の根幹になっている緒方純子(作中は久山桃香)への“マインド・コントロール”のとことから始めなきゃいけないので、今はそのあたりを描いていますが、今から1年くらいで全てを描き終えられればいいと思っています。


――この作品以前は、このように実録犯罪をテーマにした作品を描いたことはあったんですか?

稲垣 実話を基にした作品はやっていないです。以前は、いわゆる“怖い話”というマンガを描いていました。

家族同士で殺し合い、10歳娘も通電…! 実録ホラーマンガ家が語る「北九州監禁殺人事件」死者7人の本当の惨状!の画像4

――オバケや幽霊が出てくるような?

稲垣 どちらかというとサイコな登場人物が出てくるような……わかりやすくいうとドラマ『世にも奇妙な物語』のような世界観のものが多かったですね。あれをちょっと残酷にしたような作品ですね。18歳でデビューした雑誌が山咲トオルさんなんかが活躍されてた『恐怖の館』(リイド社)だったので、少女マンガの範疇に入るようなマンガを描いていました。

――今回は事実という答えがあるわけですから、創作のマンガを描く時との気持ちの違いはありますか?

稲垣 元々のストーリーをなぞって描いていくんですけれども、まず“全員いた人なのか”っていう気持ちというか、やはり“ホントに描いていいのかなぁ”という感情はありますね。

――ホラーマンガには残酷なシーンがつきものですが、それを描く時、どんな気持ちなのですか?

稲垣 それは……楽しいですね。正直、私は全然そういう描写を“怖い”と思っていなくて、“かっこいい”と思って描いているんですよね。

――それはスプラッター的な快感があるということですか?

稲垣 それもあると思います。そういう刺激が好きで、興奮してきますね。

――この『狂悪殺人録~一家監禁殺人事件~』の場合はいかがですか? 作中の第一話から、少女が自らツメを剥がすという、通常の感覚からすれば正視に耐えないシーンが繰り広げられていますが。

稲垣 被害者の方のこともあるので興奮どころかとても緊張します。描いてもいいのか未だに迷いつつ描いていますね。

家族同士で殺し合い、10歳娘も通電…! 実録ホラーマンガ家が語る「北九州監禁殺人事件」死者7人の本当の惨状!の画像5

――今回の作品を描いてみて、反響はいかがですか?

稲垣 おかげさまで閲覧数はいいようです。想像以上に皆さんが実録犯罪に興味あるということがわかりました。感想のメールをいただいたりとかもしました。一番多いのは、“だいたいしか知らなかったけれど、本当はこんなに凄かったんだ”っていうような感想ですね。

――僕の勝手なイメージなのですが、そういう凶悪犯罪もののファン層には、女性が多くないですか?

稲垣 多いです、めっちゃ多いですね。

――なぜか獄中結婚も多くの場合は犯罪者が男性で、女性が外部の人間というパターンです。稲垣さんは、この作品を描いていて、そういうような気持ちがわかりますか?

稲垣 そうですね、たぶんですけど、《悪のヒーロー》みたいな存在に魅力を感じてしまうのかもしれないですね。だから顔がそこそこよかったりすれば、そういう気持ちになってしまうのは理解できなくもないですね。

――稲垣さんでも?

稲垣 松永の正体を知っていれば近づきたくはないですけれど、穏やかそうに見えるとも聞きますし、話術も凄くておもしろいことも言うらしいし、カラオケも上手いとかいいますしね……けっこう騙されそうだとは思いますよね。

――作中での松永こと黒渠灰汰(くろみぞかいた)も、かなりかっこいいキャラクターとして描いていますね。

稲垣 やっぱりマンガなので、主役をイケメンに描かないと誰も読まないっていう部分はあるんですよね。まあ、松永も実際イケメンなんですけれどね……色白で。

――イケメンに描くことでの悪影響はあると思いますか?

稲垣 でも、私は最後にこいつをケチョンケチョンにして描こうと思ってるので……“許さないぞ”って思って描いています。ホントは凄く小心者なんですよ、実際の松永っていう男は。口が上手いだけで、物凄い小心者なので、殺人も死体の解体も全部周りにやらせている。そういうところをきちんと描けば、クズに描けると思うんですよね。

――ではこの作品で読者に伝えたいことはなんでしょうか?

稲垣 私の目的としては、“こんな酷いことが本当にあったんだよ”ってことを描ききりたい。“これ全部嘘じゃない”っていう部分。それが一番ですね。

――“事実通りに描く”というのがテーマなんですね?

稲垣 今までこの事件をマンガ化した作品はたくさんあるのですが、実話系雑誌で描かれたような1回完結の短いものや、一番有名なのは『闇金ウシジマくん』で洗脳くんっていうエピソードがこの事件をモデルにしたと言われていますね。通電も死体解体も出てきますし……。私はそれらを読んできて、“もっと詳しく具体的に”描きたいって思ったんです。

 ここに稲垣氏がそこまでリアルにこだわることを如実に物語るエピソードがある。マンガ化にあたり、「北九州一家連続監禁殺害事件」で松永が使い続けた「通電装置」を自作したというのである。

★プロフィール
稲垣みさお(いながき・みさお)
ホラーマンガ家。18歳で雑誌『恐怖の館』(リイド社)にてマンガ家デビュー。著作に『猟奇伝説アルカード』『猟奇伝説アルカード漆黒の真実編』 (ともにリイド社)『死体処理請負人アマネ 』(角川書店)死体処理請負人アマネ 完結編(ソフトマジック)等。現在ウェブサイト『恐ろし屋』で『狂悪殺人録~一家監禁殺人事件~』(https://osoroshiya.com/manga/kyouaku-satsujinroku/)を連載中。最も影響を受けたマンガは『キン肉マン』。
Twitter@inagaki_misao
・『狂悪殺人録~一家監禁殺人事件~

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文=福田光睦

Modern Freaks Inc.代表 地下編集者という名の荒野に棄てられた人間賛歌蒐集業。『Black Calendar』管理人 『下ー1グランプリ』『デスカルチャーサミット』『ヤリマン甲子園/ヤリマン五輪』主宰 『ネットで噂のヤバイニュース超真相』企画・監督 劇映画『YARIMAN HUNTER』準備中! 
ツイッター→https://twitter.com/mitutika

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