家族同士で殺し合い、10歳娘も通電…! 実録ホラーマンガ家が語る「北九州監禁殺人事件」死者7人の“本当の惨状”!

  福岡県北九州市と小倉市を舞台に1家6人を含む合計7人を殺害し(うち1人は傷害致死)、未曾有の“マインド・コントロール型”殺人事件として2002年に発覚した「北九州一家連続監禁殺害事件」。同年に逮捕され2011年に死刑が確定しているその主犯・松永太は、自ら殺人に手を染めていないにもかかわらず、監禁した人間、共犯者として無期懲役となった緒方純子らを、拷問や話術で巧妙に操り、お互いを殺し合わせた。長期間にわたり極限状態に追い込まれた家族同士が殺し合うという、救いようのない事件である。主犯が直接殺人を犯していないにもかかわらず死刑が確定していることでも、この事件の並々ならぬ残虐性がわかるだろう。日本の犯罪史に於いても類い希な事件を、今、ひとりのホラーマンガ家が自らの作品『狂悪殺人録~一家監禁殺人事件~』として描いている。

 その作家は、稲垣みさお。なぜ彼女は、見るに堪えないこの《果てしない拷問》を“そのまま描く”ことを決意したのか、その真意とは――!?

■報道規制されるほど残酷だった殺人事件

――なぜ、「北九州一家連続監禁殺害事件」を作品のテーマに選んだのでしょうか?

家族同士で殺し合い、10歳娘も通電…! 実録ホラーマンガ家が語る「北九州監禁殺人事件」死者7人の本当の惨状!の画像2稲垣みさお先生

稲垣 元々実録犯罪に興味があったのですが、今は音声と文字で実録犯罪についていろいろな方が語っているYouTube動画があるんですよ。それをずっと聞いているうちに、この事件だけ心に引っかかったというか、“本当なのかな?”と思ったんです。概要は知っていたけれど、“ここまで酷いとはみんな知らないかなぁ”と思って。“なんて残酷なんだ”と。そこでまず、この事件に関するあらゆる本を読んで、雑誌や新聞も調べて、ネットでもできる限りの情報を集めて。このマンガを書き始めたのが1年前くらいからなんですけど、実録犯罪に興味が出たのはもっと前からですね。でも、そんな事件なのに、リアルタイムではあまり興味がいってなかったんですね。

 その原因の一つには、この事件を取り巻く報道環境に特殊な状況があったからだという。

稲垣 事件が残酷すぎるから、テレビや新聞等のメディアで報道規制されたと聞きました。だから、事件が残酷なわりには、あまり有名じゃない気がします。“北九州の方で家族が殺された”っていうくらいで、ちょっとマニアにならないと詳しくは知らなかったというか、一般的には“犯人とその内縁の妻がいて、彼らに家族が殺された”っていうような認識でしょうか。

――最初の頃の報道はどのようなものだったんですか?

稲垣 事件発覚した直後は黙秘ばかりであまり詳しい情報はメディアに載ってなかったみたいです。最初は悪徳商売をして逃げた夫婦の『夜逃げ屋』というような報道をされていたのを見かけました。“家族同士で殺し合った”なんてことは報道されていないんです。

――では改めて事件について調べて、どのような印象を抱きましたか?

稲垣 松永は逃亡先の小倉で同居人たちを監禁して、最初は彼らからお金を搾り取るんですが、お金が取れなくなってくると、今度はその同居人は邪魔になってきて、虐待を始めるんです。ここからがえげつない話で、食事は与えない、冬なのに服を着せなかったり、冷たいシャワーを浴びせたり、簀の子で造った小屋に閉じ込めたり、あとは“通電”ですよね。

――“通電”?

稲垣 はい、松永は家庭用の電気コンセントから電気を流す装置を作って、それを虐待の道具として使用していました。中には半日以上も通電する日があったりしたようです。それは最初に監禁された不動産会社のA親娘でも、その後に監禁された緒方純子の一家でも同じだったんですが、10歳の子供にまで通電をしているんです。これが一番酷いなと思うところですね。そんな状態の子供を死ぬように言いくるめて、“死にたい”と言わせた。その後、自分で台所に寝て、首をロープで絞めて殺される時に、自分で首を持ち上げたと言われています。

――聞いているだけで空しくなってきますね。

稲垣 そこは絶対に許せないですよね。

 さて、このあたりでマンガ『狂悪殺人録~一家監禁殺人事件~』の話題に移る。

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